イラスト/佐々木久美子(白泉社花丸文庫)
高邑明良の父の会社が負債を抱え倒産の危機に陥った。
そこへ融資を持ちかけたのが“冷酷非情な業界のキング”と呼ばれる北城総業の専務・北城孝一だ。条件は「明良を愛人として差し出す」こと。
明良は決死の思いで愛人となるが、なぜか孝一は指一本たりとも明良に触れてこようとしなかった…!?
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北城孝一(きたしろこういち・36歳)×高邑明良(たかむらあきら・16歳)
大人×子供、年齢差20歳ときたらたいてい後ずさりしてしまう私ですが、これはなかなかどうして。
冒頭に10年前の二人の出会いがあり、だいたいのネタは読者には明かされています。さすがに当時10歳だった明良には26歳の孝一と36歳となった孝一を同一に結びつけることは難しかったようですが、孝一の方はちゃんと覚えているし、それどころか10歳の子供に慈しみ以上の感情を抱いてしまってます。
26歳の男が10歳の少年に?!とそれはそれで突き詰めるといろいろ問題あるかも…ですが、それは兎も角「パイロットになるのが夢」と語っていた明良の家が倒産の危機に陥ったとき手を差し伸べたのは全て明良のためでした。
当の明良はそんなこととは思いもよらず、会社の社員たち、過労で倒れてしまった父、継母ながら愛情深く自分を育ててくれた母、そして母のお腹にいる弟か妹となる子供のために、悲愴な思いで見ず知らずの男の愛人となることを決意します。それまでの学校を辞め、家にも二度と戻れなくなり、北城の屋敷へと連れて行かれる明良。
「愛人」としての務めがどういうものなのか、事前に明良は父の秘書から教えられてそれなりの決意もしてきましたが、性的な経験の何もない明良は、緊張と脅えの極限に立たされます。ところが初めての夜、明良に与えられた部屋で孝一は明良を全裸にしたあと全く触れることなく明良を布団で包み、「明日執事の川本が来たら、わたしは満足したと伝えなさい」と言い残して部屋を出ていってしまいます。
孝一が明良を「愛人」などと嘯いて傍に置いたのは、明良を助けるためも勿論ですが10年の想いが積もり積もった、傍に置きたいという気持ちの現われだというのはすぐに伝わってきます。明良の夢「パイロット」はかつて孝一が抱いた夢でもあり、社を継ぐために夢を諦めた孝一にとって明良の夢をかなえることが自分の夢でもありました。明良の父の会社の倒産という偶然の出来事によって孝一は遠くで見守ることよりも手元に置いて明良の夢を助け、自分の独占欲も満足させようとしたんでしょう。自分の傍において「愛人」と呼び「他の誰とも親しくするな。触れさせるな」と告げたのは独占欲以外の何ものでもないですよね。
そんな孝一ですから明良に対する態度は優しさと思いやりに溢れています。明良に手を出さないのは明良が子供であることを重々承知しているからで、傍に置きながらもまだ明良が成長するのを待っているからです。
けれど明良は戸惑います。「愛人」としての勤めに未知の恐怖を抱きながらも、一度も触れてもらえないのでは役に立つことができずに放り出されてしまうかもしれないと不安になります。明良に接する孝一の態度は「冷酷非情」どころか暖かく優しさに満ちたもので明良は少しずつ孝一から警戒を解いていきますが、役目を果たそうとする明良の拙い誘いは「自分がどうしたいのかよく考えてみろ」と言われ拒まれてしまいます。
初めは「愛人」という立場を恥ずかしく思っていた明良ですが、北城家での明良の扱いは、きちんとした部屋を与えられ衣食も気づかわれ、新しい学校にも通わせてもらい、孝一の父や兄、執事の川本からも家族のように扱われて、少しずつ居心地のいいものとなっていきます。そして何より孝一の優しさに触れ、孝一そのものに惹かれはじめる。「愛人」としての義務感で嫌々ながら抱かれることを受け入れようとしてきた明良が、次第に「好きだから触れたい、触れて欲しい」と思いはじめる過程がきちんと伝わってきます。
読んでいる方は孝一の想いがわかるのでその点の心配はないですが、明良がいつ孝一のことを思い出して、孝一の思いを知るのかがストーリーのメインですね。明良視点ですが口には出さない孝一の想いもちゃんと伝わってくるし、明良の初々しい初恋もとても可愛らしいです。
年齢差が大きいし、明良自身がとても素直でウブな男の子なので幼さが目立つのは仕方ないと思います。でも孝一の方も結構「36歳」の純情が可愛らしく思えました。孝一の父も黙認で、弟も執事も暖かい目で見ているところから察するに、この10年間、孝一はもしかして家の中で「明良が欲しい!」と明良への愛を叫び駄々を捏ね続けていたんでしょうか(笑)そんな息子はちょっと心配です(^^ゞ でも何だか可愛らしく思えますね。
「スキャンダラスなプチキャット」とリンクした作品ですが、これだけで全く問題ありません。
「犯ってくれない攻と犯ってほしい受」は結構面白かったです。
北城孝一(きたしろこういち・36歳)×高邑明良(たかむらあきら・16歳)
大人×子供、年齢差20歳ときたらたいてい後ずさりしてしまう私ですが、これはなかなかどうして。
冒頭に10年前の二人の出会いがあり、だいたいのネタは読者には明かされています。さすがに当時10歳だった明良には26歳の孝一と36歳となった孝一を同一に結びつけることは難しかったようですが、孝一の方はちゃんと覚えているし、それどころか10歳の子供に慈しみ以上の感情を抱いてしまってます。
26歳の男が10歳の少年に?!とそれはそれで突き詰めるといろいろ問題あるかも…ですが、それは兎も角「パイロットになるのが夢」と語っていた明良の家が倒産の危機に陥ったとき手を差し伸べたのは全て明良のためでした。
当の明良はそんなこととは思いもよらず、会社の社員たち、過労で倒れてしまった父、継母ながら愛情深く自分を育ててくれた母、そして母のお腹にいる弟か妹となる子供のために、悲愴な思いで見ず知らずの男の愛人となることを決意します。それまでの学校を辞め、家にも二度と戻れなくなり、北城の屋敷へと連れて行かれる明良。
「愛人」としての務めがどういうものなのか、事前に明良は父の秘書から教えられてそれなりの決意もしてきましたが、性的な経験の何もない明良は、緊張と脅えの極限に立たされます。ところが初めての夜、明良に与えられた部屋で孝一は明良を全裸にしたあと全く触れることなく明良を布団で包み、「明日執事の川本が来たら、わたしは満足したと伝えなさい」と言い残して部屋を出ていってしまいます。
孝一が明良を「愛人」などと嘯いて傍に置いたのは、明良を助けるためも勿論ですが10年の想いが積もり積もった、傍に置きたいという気持ちの現われだというのはすぐに伝わってきます。明良の夢「パイロット」はかつて孝一が抱いた夢でもあり、社を継ぐために夢を諦めた孝一にとって明良の夢をかなえることが自分の夢でもありました。明良の父の会社の倒産という偶然の出来事によって孝一は遠くで見守ることよりも手元に置いて明良の夢を助け、自分の独占欲も満足させようとしたんでしょう。自分の傍において「愛人」と呼び「他の誰とも親しくするな。触れさせるな」と告げたのは独占欲以外の何ものでもないですよね。
そんな孝一ですから明良に対する態度は優しさと思いやりに溢れています。明良に手を出さないのは明良が子供であることを重々承知しているからで、傍に置きながらもまだ明良が成長するのを待っているからです。
けれど明良は戸惑います。「愛人」としての勤めに未知の恐怖を抱きながらも、一度も触れてもらえないのでは役に立つことができずに放り出されてしまうかもしれないと不安になります。明良に接する孝一の態度は「冷酷非情」どころか暖かく優しさに満ちたもので明良は少しずつ孝一から警戒を解いていきますが、役目を果たそうとする明良の拙い誘いは「自分がどうしたいのかよく考えてみろ」と言われ拒まれてしまいます。
初めは「愛人」という立場を恥ずかしく思っていた明良ですが、北城家での明良の扱いは、きちんとした部屋を与えられ衣食も気づかわれ、新しい学校にも通わせてもらい、孝一の父や兄、執事の川本からも家族のように扱われて、少しずつ居心地のいいものとなっていきます。そして何より孝一の優しさに触れ、孝一そのものに惹かれはじめる。「愛人」としての義務感で嫌々ながら抱かれることを受け入れようとしてきた明良が、次第に「好きだから触れたい、触れて欲しい」と思いはじめる過程がきちんと伝わってきます。
読んでいる方は孝一の想いがわかるのでその点の心配はないですが、明良がいつ孝一のことを思い出して、孝一の思いを知るのかがストーリーのメインですね。明良視点ですが口には出さない孝一の想いもちゃんと伝わってくるし、明良の初々しい初恋もとても可愛らしいです。
年齢差が大きいし、明良自身がとても素直でウブな男の子なので幼さが目立つのは仕方ないと思います。でも孝一の方も結構「36歳」の純情が可愛らしく思えました。孝一の父も黙認で、弟も執事も暖かい目で見ているところから察するに、この10年間、孝一はもしかして家の中で「明良が欲しい!」と明良への愛を叫び駄々を捏ね続けていたんでしょうか(笑)そんな息子はちょっと心配です(^^ゞ でも何だか可愛らしく思えますね。
「スキャンダラスなプチキャット」とリンクした作品ですが、これだけで全く問題ありません。
「犯ってくれない攻と犯ってほしい受」は結構面白かったです。
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