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命令を待ってる
火崎 勇著
ワンツーマガジン社 (2005.12)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/葛井美鳥(アルルノベルス)

両親を事故で亡くして以来、編集に市来は『特別』が嫌いだ。けれどそんな市来の前に現われたのは誰が見ても『特別なイイ男』大月だった。彼の容貌に見惚れる市来は、いきなり大月に「なんでも命令してくれ」と告げられる。
初めは拒絶していたけれど、優しく真摯に接してくる大月に、市来は少しずつ警戒心を解いていく。しかし同僚から大月が市来の「失われた過去」の関係者だと知らされ―。
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大月和馬(おおつきかずま・30歳)×市来礼(いちきれい・24歳)

「命令を待ってる」
「欲しがる言葉」の二編収録されています。

市来は『特別』であることを嫌っています。
『特別』だった幼い頃のある一日に、両親と同乗していた車が事故に遭い両親は死亡。自分だけが『特別』に生き残り、母の妹に引き取られたものの家庭では自分だけが『特別』。学校では親のない子として『特別』な目で見られる。
市来にとって『特別』は悪いものをつれてくる象徴のようなものとなっていて、そんな彼は特別なことが起きて嫌な思いをするくらいなら、とにかく何も起こらない『普通』がいいと考えている。
そんな市来の前にある晩突然一人の男が現れます。
ボロアパートの隣りの部屋に越してきたその男・大月は初対面でいきなり「俺はお前の願いを叶えるためにやってきた。何でも命令してくれ。どんな望みも叶えてやるから」と言い出します。

市来も言ってますがいきなりのこのセリフは「ランプの精」みたいですよね。
気がつかなかったけど人外のモノのお話だったかしら…?と一瞬思いましたがそうではありませんでした。ちゃんとした理由があるのですが、その理由は暈してあります。少しずつ明らかになっていくと、過去の両親が亡くなった事故と関係があることがわかってくる。
その前からなんとなく想像はつくけれど、その謎に引き付けられました。

市来は大きな事故のショックから事故についての記憶を亡くしていて、全ての始まりだった大月に出会ったことも自分が大月に言った言葉も覚えていません。なので見も知らない大月が突然親しげに物をくれようとしたり食事を奢ってくれたり、何かして欲しいことはないかと聞いてきて、あげくに恋愛感情という意味で「好きだ」と告げてきても、市来は戸惑うばかりです。
それでも市来の質問には何でも答えてくれ(事故の話だけはしませんが)、誠実で嘘がなく市来の嫌なことはしないと言ってくれる大月に市来は次第に惹かれていきます。
けれども大月を好きになりその存在が『特別』なものとなってしまうと、それを失ってしまうのではないかというトラウマがなかなか気持ちを認めさせてくれません。

「好き」という気持ちは簡単になくなってしまうものだから、大月が自分の傍にいなければならないきちんとした「理由」が他にあればいいのにと市来は思います。けれど大月と自分と事故との繋がりを知ったとき、彼の「好き」という言葉に嘘はなくても、そのもっと奥には自分への償いがあるのだと知り、願っていた「理由」を手に入れたのに、ただの自分を純粋に「好き」と言ってもらえないということに寂しさを感じるんですね。市来の微妙な気持ち、寂しさや切なさがよく伝わってきました。

大月と事故の関係は途中で大月が告白しますが、ラスト近くに本当の真実があります。ちょっとホッとしますが、同時に大月の想いってなんか凄い、と思いました。これが本当にあったら(フィクションですが)あまりに深いですね。自分のことを「ストーカー」というのも無理ないかもしれない(^^ゞ

「欲しがる言葉」はそんな大月の過去から今への市来への想いが語られています。ごく短いもの。
長い間市来だけを見つめてきた大月なら、市来も今度こそ『特別』に幸せになれそうです。
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