イラスト/ひたき(ラヴァーズ文庫)
連続爆弾魔事件が世間を騒がせている中、裕也は親友の竜治の部屋で作りかけの爆弾を見つけてしまう。
責める裕也は何とか爆弾の製造を思いとどまらせようとするが竜治の口から出たのは「お前が俺と付き合うなら、もうこんなもの造るのはやめる」という言葉だった。裕也はその条件をのみ竜治に抱かれるが、その後も爆弾魔の反抗が途切れる様子はない。
竜治が犯人であるがずがない。そう信じたい反面、疑いを隠せない裕也の心を竜治も感じ取る。
果たして犯人は竜治なのか。
本当の恋人ではない、友人にも戻れない、二人のもろい関係が崩れ始めていく―。
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久世竜治(くぜりゅうじ・26歳)×瀬尾裕也(せおゆうや・26歳)
この作品の続編が発売になっているのを目にして、どうせなら最初からと読んでみました。
夜光花さんはこれ以前には1冊しか読んでおらず、なんとなく「重い」というイメージがありましたが今作品も結構ヘビーでありました。
竜治の代議士である父は表では清廉な顔をしながら裏では悪徳をつくす政治家。母は家庭を顧みない父をよそに浮気を繰り返す。そんな家庭で育った竜治は高校時代荒れまくっていて、竜治に従う不良仲間たちと爆発物を作って遊び、小動物を虐待するなどしていました。そして新たな爆発物を作るため学校の化学室に薬品を盗みに入ったところを裕也に見咎められれ、裕也の説得で竜治はそれを思いとどまります。それ以来竜治と裕也の友人つきあいは続き、26歳になった現在裕也はピアノの調律師、竜治は刑事となりました。
そんなある日、竜治、そして同級生の喜多村(きたむら)と三人で酒を呑んだ裕也は竜治の家に泊めてもらうことになるのですが、竜治の家の地下室に作りかけの爆弾が置いてあるのを偶然目撃してしまいます。高校時代自分の説得に応じこんなことは止めたものだと思っていた裕也はショックを受け竜治に詰め寄り「俺にできることは何でもするからこんなことは止めて欲しい」と頼みます。それに対する竜治の答えは「お前を俺のものにしたい」というもので裕也は驚きます。実は以前裕也は竜治から同じような告白されたことがあり、その時同性とつきあうことなど考えも及ばなかった裕也はそれを断っていました。
動揺する裕也ですが、どうしても竜治に犯罪を犯させたくなかった裕也はその言葉を呑み、二人は「取引」の関係となります。
しかしそのころ世間では爆弾騒ぎが相次ぎ、裕也は疑念を抱きはじめます。
もしかすると竜治が犯人ではないのか。自分と約束した竜治を信じたい気持ちはあるもののどうしても不安を拭い去れない裕也は友人の喜多村に不安を打ち明け、それとなく探ってもらうようにと頼みます。
竜治が犯人なのか。
裕也の不安と同じように読んでる私も不安でした(^^ゞ
そのせいで先を知りたくて止まらず一気に読んでしまいました。
竜治の家庭は崩壊状態で、母が事故で亡くなったあとは父とは全くの疎遠。底知れない深い闇を抱え、半ば壊れた状態なのが竜治です。それは「破壊衝動」という言葉で何度か出てきますが、竜治の心の中には抑えきれない、何かを壊したい、ぶっ潰したいという思いが渦巻いて燻っています。裕也の存在によってこちら側に引き止められているものの、何かの拍子でキレてしまえば簡単に闇の側へ落ちてしまいそうな危うさです。それは家庭の不和によって傷ついているとかそういう問題ではない、竜治自身の心の問題のように思えます。
そんな竜治は裕也にとても執着心を抱いています。高校時代、化学室で自分を必死に止めてくれた裕也に、自分を正常な世界に繋ぎとめるものを無意識に見たのかもしれません。裕也を自分のものにしたいという思いを、一度告白を断られたあとは抑え続けてきたようですが、「取引」によって表に出てからは、その執着は圧倒的な激しさで裕也自身に向けられ、また裕也を傷つけるものへは、容赦のない冷徹な怒りとなって相手を殺しても構わないというほどです。
それを受け止める裕也はタイプとしてはどちらかというと線の細い真面目な青年ぽいですが、時には竜治を恐れながらも臆することなく対峙し、竜治の危険さに比べると正反対の安定感のようなものを感じます。何度も言いますが闇を抱える竜治を唯一繋ぎとめるのが裕也ただ一人の存在だということがよくわかり、竜治の気持ちの重さが伝わってきました。
そしてまた裕也自身も、竜治を堕ちさせたくないという真剣な想いによって、心の底から自分を揺さぶるものが竜治の存在であることに気づきます。「君には大きく欠けているものがある」と上司に言われ、自分でもなんだかわからなかったその欠けているものが、竜治の存在によって見えてくるんですね。
竜治の心の闇に加えて、犯罪も絡んでおり、爆弾によって怪我をする無名の人々などヘビーな展開もありますし、ラストまでいってもこれが都合よく何もかもハッピーということにはなりません。なったら却っておかしいですけど。二人の心はしっかりと結びつきますが、竜治の闇は消えたわけではないと思うし裕也も目に障害を負ってしまいます。
それでも真犯人は誰かという謎も、竜治、裕也それぞれの想いも、とても引き込まれる内容でした。
裕也の障害自体は好転を予想させるものの、本編が竜治の中の闇を中心にしたものであったのに対して続編は裕也の心の傷の方が中心になります。
その続編「愛にふれさせてくれ」の感想は明日お届けします。
久世竜治(くぜりゅうじ・26歳)×瀬尾裕也(せおゆうや・26歳)
この作品の続編が発売になっているのを目にして、どうせなら最初からと読んでみました。
夜光花さんはこれ以前には1冊しか読んでおらず、なんとなく「重い」というイメージがありましたが今作品も結構ヘビーでありました。
竜治の代議士である父は表では清廉な顔をしながら裏では悪徳をつくす政治家。母は家庭を顧みない父をよそに浮気を繰り返す。そんな家庭で育った竜治は高校時代荒れまくっていて、竜治に従う不良仲間たちと爆発物を作って遊び、小動物を虐待するなどしていました。そして新たな爆発物を作るため学校の化学室に薬品を盗みに入ったところを裕也に見咎められれ、裕也の説得で竜治はそれを思いとどまります。それ以来竜治と裕也の友人つきあいは続き、26歳になった現在裕也はピアノの調律師、竜治は刑事となりました。
そんなある日、竜治、そして同級生の喜多村(きたむら)と三人で酒を呑んだ裕也は竜治の家に泊めてもらうことになるのですが、竜治の家の地下室に作りかけの爆弾が置いてあるのを偶然目撃してしまいます。高校時代自分の説得に応じこんなことは止めたものだと思っていた裕也はショックを受け竜治に詰め寄り「俺にできることは何でもするからこんなことは止めて欲しい」と頼みます。それに対する竜治の答えは「お前を俺のものにしたい」というもので裕也は驚きます。実は以前裕也は竜治から同じような告白されたことがあり、その時同性とつきあうことなど考えも及ばなかった裕也はそれを断っていました。
動揺する裕也ですが、どうしても竜治に犯罪を犯させたくなかった裕也はその言葉を呑み、二人は「取引」の関係となります。
しかしそのころ世間では爆弾騒ぎが相次ぎ、裕也は疑念を抱きはじめます。
もしかすると竜治が犯人ではないのか。自分と約束した竜治を信じたい気持ちはあるもののどうしても不安を拭い去れない裕也は友人の喜多村に不安を打ち明け、それとなく探ってもらうようにと頼みます。
竜治が犯人なのか。
裕也の不安と同じように読んでる私も不安でした(^^ゞ
そのせいで先を知りたくて止まらず一気に読んでしまいました。
竜治の家庭は崩壊状態で、母が事故で亡くなったあとは父とは全くの疎遠。底知れない深い闇を抱え、半ば壊れた状態なのが竜治です。それは「破壊衝動」という言葉で何度か出てきますが、竜治の心の中には抑えきれない、何かを壊したい、ぶっ潰したいという思いが渦巻いて燻っています。裕也の存在によってこちら側に引き止められているものの、何かの拍子でキレてしまえば簡単に闇の側へ落ちてしまいそうな危うさです。それは家庭の不和によって傷ついているとかそういう問題ではない、竜治自身の心の問題のように思えます。
そんな竜治は裕也にとても執着心を抱いています。高校時代、化学室で自分を必死に止めてくれた裕也に、自分を正常な世界に繋ぎとめるものを無意識に見たのかもしれません。裕也を自分のものにしたいという思いを、一度告白を断られたあとは抑え続けてきたようですが、「取引」によって表に出てからは、その執着は圧倒的な激しさで裕也自身に向けられ、また裕也を傷つけるものへは、容赦のない冷徹な怒りとなって相手を殺しても構わないというほどです。
それを受け止める裕也はタイプとしてはどちらかというと線の細い真面目な青年ぽいですが、時には竜治を恐れながらも臆することなく対峙し、竜治の危険さに比べると正反対の安定感のようなものを感じます。何度も言いますが闇を抱える竜治を唯一繋ぎとめるのが裕也ただ一人の存在だということがよくわかり、竜治の気持ちの重さが伝わってきました。
そしてまた裕也自身も、竜治を堕ちさせたくないという真剣な想いによって、心の底から自分を揺さぶるものが竜治の存在であることに気づきます。「君には大きく欠けているものがある」と上司に言われ、自分でもなんだかわからなかったその欠けているものが、竜治の存在によって見えてくるんですね。
竜治の心の闇に加えて、犯罪も絡んでおり、爆弾によって怪我をする無名の人々などヘビーな展開もありますし、ラストまでいってもこれが都合よく何もかもハッピーということにはなりません。なったら却っておかしいですけど。二人の心はしっかりと結びつきますが、竜治の闇は消えたわけではないと思うし裕也も目に障害を負ってしまいます。
それでも真犯人は誰かという謎も、竜治、裕也それぞれの想いも、とても引き込まれる内容でした。
裕也の障害自体は好転を予想させるものの、本編が竜治の中の闇を中心にしたものであったのに対して続編は裕也の心の傷の方が中心になります。
その続編「愛にふれさせてくれ」の感想は明日お届けします。
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