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スノーファンタジア
うえだ 真由著
新書館 (2005.10)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/あさとえいり(ディアプラス文庫)

里央は親友の陽史に密かに想いを寄せていた。
だが陽史の恋人が半年間の留学に出発した日、見送りに行った二人は事故に遭い、陽史が記憶喪失になってしまう。
彼女の存在も忘れた陽史は、親身に面倒を見てくれる里央を自分の恋人だったと思いこむ。
ずっと叶わぬ恋だと諦めていたけれど、ひとときでも陽史の恋人になってみたい―。その気持ちに抗えず、里央は本当の事が言えなくて…。
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坂口陽史(さかぐちはるふみ)×松岡里央(まつおかりお)
同級生。大学2年から3年生。

「スノーファンタジア」雑誌掲載
「グリーンセレナード」書き下ろし の二編。


大学生になって出会ってからいつも一緒に行動する親友となった陽史と里央。里央は陽史に惹かれていましたが男である自分が告白することなどできません。
親友として傍にいられればいいと、陽史と黎子(れいこ)が知り合って恋に落ちた時も、里央は二人を応援し、陽史の幸せそうな顔を見ることが自分の幸せだと、気持ちを隠してきました。
そんなある日黎子が半年間の留学で日本を離れる際、見送りに行った二人は帰り道で交通事故に会い大怪我をしてしまいます。怪我は二人とも重傷でしたが幸い命に別状はありませんでした。しかし、昏睡から覚めた陽史は過去2年程の記憶をすっかり失くしてしまっていました。
事故の記憶は勿論、大学生である自分のことも、友人のことも、そして里央や恋人の黎子のことも覚えていない陽史。自分も大怪我を負いましたが、里央は陽史のそばにいて献身的に面倒を見ます。

陽史の恋人の黎子(れいこ)は政治家の一人娘で、すでに婚約者がいて、大学卒業後は結婚することが決められていました。そのため、陽史と黎子の交際は周囲に認められるものではなく、二人がつきあっていることを知っていたのは里央だけでした。そのことが全ての始まりなんですね。
陽史の母に恋人の存在を問われた時、二人の秘密を自分が勝手に明かしていいかどうか迷った末に「いない」と答えてしまう。周囲の友人のことを誰ひとり覚えていない陽史にも、「彼女はいないのか」と尋ねられたとき、「秘密の恋人がいる」と複雑な事情を伝えて混乱させてはいけないと、そこでも口を噤んでしまう。黎子へも、遠く離れた異国にいてどうすることもできない彼女を不安にさせてしまうことが躊躇われ、連絡を躊躇してしまう。
退院して自分のアパートに戻った陽史は、恋人の存在を部屋に感じて疑問を抱いたものの、あまりに用意周到に隠されていた二人の関係は、友人にも知られておらず、写真一枚さえ残っていない。
そして陽史が黎子にプレゼントしようとした「R」の文字のついたペンダントを発見した時、陽史は「R」が「里央」だと勘違いしてしまうんですね。里央がこれほど献身的に自分につくしてくれるのも、つきあっていることを打ち明けなかったのも男の恋人だと聞いて自分が混乱しないようにとの思いやりだと考えてしまいます。そして里央がとっさに返事ができなかったことが肯定となってしまいます。何より、退院するまでの数ヶ月陽史の傍にいて彼を支えてきて、里央は以前よりもっと陽史のことが好きになっており、誤解を解くことができなくなっていたのでした。

陽史にはもちろん里央と恋人同士だった記憶などあるはずもないのですが、記憶を失って時に荒れる自分を優しく受け止め、他人の好奇の視線にされされたときにはさりげなく守り、自分につくして傍にいてくれる里央にどんどん惹かれていきます。陽史は記憶喪失となっても元々の誠実な性格が変わることはなく、恋人ど信じ、本当に好きになった里央に優しく接します。
けれど、里央にとっては、それが次第に苦しみとなっていきます。自分が一番初めに「黙って」いたことが、「嘘」となり積み重なっていく。
陽史は日常の中で少しずつ記憶を取り戻していて、やがて全てを思い出した時、自分の嘘はばれて「親友」としてさえ、もう傍にはいられなくなってしまうだろう。

読んでいて里央の想いはとても苦しかったです。
「どうして真実を言わなかったのか」 最初は二人の秘密を公にすることはできない、陽史を混乱させてはいけないという躊躇いだったものが、そばにいるうちに「少しだけでも恋人になりたい」という欲に変わっていくのですが、切ない胸のうちにエゴのようなものを感じることはありませんでした。考えてみれば、陽史にとってもそして何も悪いことはしていない黎子にとってもひどいことだと思うんですが、里央にはそれがよくわかっていて、次第に追いつめられていく。ズルイと言えば確かにその通りなんですが、それほどまでに陽史を想う気持ちの切なさのほうにジンとさせられました。
記憶が戻ったときどうなるんだろう、それまで黙っているのか、それとも…とそっちの興味も大きくて、タイムリミットを待たされているようなドキドキした気持ちもありました。

「グリーンセレナード」は、その後の二人。
恋人同士となったそもそもの始まりが、自分が陽史を騙したことだった里央は、陽史の想いに疑いはなくても、どうしても心から罪悪感が消えません。私としても本音を言えば、これで「めでたく恋人になりました」では、いくら里央の想いがわかると言っても尻の座りが悪いです。
こちらの書き下ろしでは、その辺をいちおうキチンとしてくれてる感じでした。。
一冊を通して視点は里央側なので、切々とした里央の心情に比べると陽史の方は内面の印象が薄い感じがしたんですが、陽史がほんとに誠実で真っ直ぐで、嘘やごまかしのない、いいヤツなんだなぁというのは凄く伝わってきます。
出来すぎた男だと思いますが、こんなに切ないと丸く収まってくれないと気持ち悪いですから…(^^ゞ
幸せになれて良かったな、と素直に思っておこうと思います。
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