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夏休みには遅すぎる
菱沢 九月著
徳間書店 (2005.10)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/山田ユギ(キャラ文庫)

大学の後輩・倉島に突然会社から拉致されてしまったサラリーマンの覚。行く先も告げずに会社を欠勤させられ逃避行のように旅立つけれど、倉島は何も教えてくれない。
しかも夜になると縋るように身体を求めてくる。
密かに倉島に想いを寄せていた覚は、倉島の心が見えないまま繰り返し抱かれてしまうが…。
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倉島旬滋(くらしましゅんじ・23歳)×森野覚(もりのさとる・24歳)

同じ大学の寮で同室だった覚と倉島。覚はその頃から倉島に片思いしていましたが、覚の卒業と同時に音信は途絶えていました。
ところが突然倉島が覚の会社に「従兄弟」だと名乗って現われ、存在しない祖母の怪我を理由に会社から連れ出されてしまいます。
「あとで説明する」と言いながらハッキリしたことは何も言わない倉島に覚は戸惑いますが、旅館に着いたその夜、覚が倉島を好きだったことを指摘された上、覚は倉島に強引に抱かれてしまいます。
そして神奈川から京都、そして博多へと連れて行かれる覚。

倉島の抱えているものが何なのか、少しずつ想像はついてきます。けれど、きちんと順序立てて説明してもらえるのは本の厚みが残り4分の1ほどになってからです。
それまでは登場人物が覚と倉島しかいないと言っていいくらいで、それもお互い内面探求のような感じなので、お話が動き出す4分の1以降からラストまでは、急に展開が流れ出したように感じました。

倉島の抱えているものというのは「母の死」なのですが、母一人子一人で育った倉島は母への愛情が事の外強く、その死を受け止めきれずに壊れかけているんですね。大学で建築を学んだのも母の「実家に帰りたい」という願いを叶えるため。実家のあった場所に自分で家を建ててやることが倉島の夢であり人生の一番の目標だったんだと思います。
しかし大学在学途中で心臓の弱かった母はとうとう倒れ、入院費や手術代を捻出するために大学を止めざるを得なくなり、彼の夢はそこで中断されます。それでも昼夜を問わず働き、移植が必要なら自分の心臓をあげるとまで言っていた倉島。けれど母は願いも虚しく亡くなってしまう。母のことを「愛してる」とまで言っていた倉島にとってはそれだけでもちろん大きな衝撃です。
それなのにそこへ自分の兄と父という人物が現われる。悲しむ倉島の目の前で「父」と名乗る男は号泣し、異母兄は現実的なこれまでの入院費や今後の補償のことを話し始める。自分より先に泣かれてしまい、異母兄の情のない物言いに混乱し憤った倉島は、母の死をちゃんと悲しむことができなかったんですよね。
悲しみは大きくても、きちんと泣いて、全ての手続きを自らの手で終えることができたら、倉島も痛みは消えないまでもある種の区切りは付けられたかもしれない。けれど突然現われた見も知らない「家族」によってそれができなくなった。
ただでさえ大きくて深い悲しみは倉島の中で出口を失ってしまい、苦しくて助けを求めて手を伸ばしたのが覚だった、ということかと。自殺まで考えた倉島の最後の命綱とも言えるかも。

と、読み終わってから思ったんですが、読んでる途中では倉島がどうなっちゃったのかハッキリはわからないのでこちらも覚と一緒に暗中模索のような感じでした。これはもしかしてイタイのかそれとも切ないのか、どう心構えしたらいいのか迷いました。倉島のイメージはなんとなくおっとりとした感じで、訳がわからないせいで、倉島の壊れてしまった内面と外側のイメージの折り合いがどうも私の中でつけ難かったということもあります。読み終わったら、優しすぎる彼の精神の痛みがわかりましたけど。
男の子というのはホントにお母さんが好きですよね。特に幼い時は行動や言葉にそれが顕著に現われるように思います。個人差は勿論ありますが、倉島というひとは母だけに限らず「人に優しくしたい」といつも思っていて、そう思えることが彼の一番安定した状態であるという、もともととても愛情深い人です。そんな息子の母への愛の深さは、彼の性格や母子家庭だったという境遇も合わせて、「ありそうだ」と思えてしまったんですよね。

倉島の想いがわかってお話が動きだすと雰囲気もちょっと変わりましたね。
風変わりな父と兄が、なんだかとてもホッとさせてくれた。
「覚」にたいしての「小さい人」という呼び名、思わず「ホビットさんかよ」と笑ってしまいました。
ラストはまるで二人芝居のような閉鎖的な雰囲気から、一気に未来を感じさせてくれました。

読んでる最中と読後の印象が違ってました。
倉島にとってはすごくいい転換だと思えるので素直に嬉良かったと思います。
そして覚にとっては…「棚からぼた餅」…ちょっと違う?(笑)
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