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微熱を残すキス
かのえ なぎさ著
リーフ (2005.10)
通常2-3日以内に発送します。
イラスト/高久尚子(リーフノベルス)


優が勤める家具店に客として現われた男は、中学時代自分をひどく苛めていた先輩・圭吾だった。再び当時と変わらぬ激しさで執着してくる圭吾に優は脅える。断りきれずに会うことを繰り返す優だったが、時折見せる圭吾の優しさに、恐れよりも惹かれる気持ちが募っていく。けれど圭吾には美しい婚約者がいて…。
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古谷圭吾(ふるやけいご・28歳)×成瀬優(なるせゆう・26歳)

優の勤める家具店の社長の息子が、ある日客を伴って店に現われ、優はその客を見て驚きます。
中学時代、優を執拗に構い苛めていた先輩の圭吾との再会に優は脅えますが、その日から圭吾は頻繁に優の前に現われるようになります。

優はアメリカ人の父と日本人の母との間に私生児として生まれたハーフで、幼い頃は金髪と紺色に近い瞳の色のため周りから奇異の目で見られひどい苛めを受けてきました。生まれた時から父の存在はなく、母さえも10歳のときに自分を捨て行方がわからなくなり、優はずっと施設で育ってきたのです。中学になるとやっと周りも自分に飽きたのか直接的な苛めではなく無視されるという状態になっていましたが、東京から転校してきた圭吾だけは優につきまとい、髪を引っ張ったり小突き回したり、ある時は突き飛ばされて頭に怪我を負わされたりしていました。
圭吾の中学卒業とともに圭吾は東京へ帰り、二人が会うことはなかったんですが、再会した圭吾は相変わらず傲慢で強引で有無を言わせず優を引き回します。ですが中学時代を思うと圭吾が恐ろしく、その視線だけで脅えてしまう優は圭吾を跳ねつけることができません。

こんなふうに書くと一方的に優が圭吾に辛い目に合わされているみたいですがそんな印象は実はなかったです。何故なら圭吾の気持ちがわかりやす過ぎるから(^^ゞ
中学のとき苛めていたのも、再会して執拗に目の前に現われるのも、優のことが好きだからというのが見え見えなんですよね。ただ性格的にぶっきら棒でとても傲慢ですし、優しくする時も、穏やかに…ではなくてなんだかちょっと怖い。優しくしたいのに優が脅えるから余計にそうなるのかもしれません。
それに、中学生だったときは親の庇護の元では言いなりになるしかできなくて、本当に欲しかった優を手放さなければならなかったので、再会して抑えが利かなかったのかもしれませんね。
優は見た目のコンプレックスもそうですし、幼い頃心無い苛めで暴力を振るわれたり言葉で傷つけられたりしていましたので非常に性格的に臆病で人の気持ちに敏感で弱々しいキャラで、あとがきで作者様も仰ってますがホントに「小動物」っぽいです。圭吾のような存在感のある押しの強いタイプの前では竦んでしまうのもムリはないです。猛獣の前に引き出されたエサみたいです。あとがきにもありましたが、その辺徹底的に書かれたようです。ビクビクしたり震えたりオドオドしたり、そんな描写には小鹿とか子ウサギの姿が浮かんでしょうがなかったです。

もの凄くパワーに差のあるカップルなんですが、ここまで差があるとかえって妙に萌えでした。優が変に普通の26歳の男性っぽくなく徹底的に優しい儚いタイプだったので、圭吾の荒々しさとか男らしさとか、情熱とか真っ直ぐで強い想いとかが際立ったんだと思います。そしてその反対も言えるんですよね。圭吾の激しさに翻弄されながら惹かれていく優の想いもよく伝わってきました。

中学生のとき、優が圭吾に怪我をさせられてから以降のことを優が覚えていないというのは何か特別な訳があるのかと思っていたんですが、明かされた理由にはちょっと首を傾げました。
そんなことが絶対ないとは言いませんが、辛い出来事をその部分だけ忘れることってできるもんなんでしょうか。覚えていれば少なくとも優の圭吾に対する脅えはもっと早く取り除かれていたんですよね。

儚げで可哀相さの滲む優ですが、辛いことは圭吾とのことだけでは終わりません。誤解が解け想いが通じた二人ですが圭吾の婚約者とその兄が大きな障害となります。この兄妹の存在は優にとってかなり辛いものとなっています。
婚約者の兄の洋輔(ようすけ)は、ハンサムで穏やかで一見優しげですがチクチクと棘のある優への接し方は圭吾より恐ろしい。ですが、優に手切れ金を渡し手を引かせようとしたときの、“優を金目当ての男だったと思いたい、だから受け取ってくれ”という言葉には、それなりの苦しさも滲んでいるように思いました。妹の方も、BLによくある物分りのいい女性ではありませんが、やはり完璧な憎まれ役のお邪魔虫のままでは終わっていませんでした。

優の境遇は読んでてちょっと辛かったけれど、圭吾には強い情熱と力と勢いが感じられて、優を圧倒的な強さで救って守ってくれる、そんな安心感も感じていました。
普段は弱々しいキャラはあまり好きではありませんが、この二人はこの対照的な差が絶妙にマッチしてるように思えてとても好きでした。
大変楽しく読ませていただきました。
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