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ただ一人の男
ただ一人の男
posted with 簡単リンクくん at 2005.10.27
火崎 勇著
心交社 (2005.8)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/亜樹良のりかず(ショコラノベルス)

幼い頃のトラウマから人間を『もの』としてしか見ることができなくなった如月。過去の出来事が悪夢となって蘇るたび、そこから救ってくれるのは同居人の尾崎だった。男女の区別なくベッドに連れ込むような男だが、如月にセックスを求めることはなく、如月の方もそれ以上の関係を結ぶつもりはなかった。
しかしある出来事から尾崎を『人間』として認識するようになり、如月の心に変化が訪れる。
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尾崎一雅(おざきかずまさ)×如月巳波(きさらぎみなみ)
年齢は設定されていませんでした。
如月一人称。


如月の幼い頃のトラウマとは、強盗に襲われた両親が死んでゆくのを目の前で見続けてしまったというものです。さっきまで動いていたものが、まるで電池かスイッチが切れたように動かない『もの』になってしまう。隣人が助けにくるまで一晩を耐えた子供だった如月の心は、その辛い経験から、どんな人間もみんなスイッチが切れれば「人形」のような物になってしまう…と硬く閉ざされてしまったんですね。
周りにいるどんな人さえも、如月の心には「もの」としてしか映らず、心が揺さぶられることもない。
とても痛々しいんですが、如月の苦しみは淡々と語られています。淡々だから余計に冷め切ってしまった心が伝わってくる感じでした。

尾崎は元ヤクザで現在は不動産会社を経営しています。
ある土地を巡り、尾崎が狙われ刺されて倒れた現場を見て如月は過去を思い出しパニックになります。しかし尾崎は血の海から立ち上がり、如月に「大丈夫だ」と声をかけ、そして彼は死ななかった。
その出来事が如月に「尾崎」を「人間」だと認識させるきっかけになります。
同居はしていたものの、尾崎は自分の部屋に男女の別なく人を連れ込みセックスをしていて、如月もそれをなんとも思っていませんでした。如月が尾崎に欲していたのは、自分がパニックになったときに抱きしめてくれるぬくもりだけだったからです。
如月は次第にそれが苦しいと思うようになっていきます。
凍ってしまっていた心が少しずつ溶け出して、尾崎に揺れ動きます。でも如月の冷たかった心はそれに戸惑い、なかなか許容することができません。
如月の想いはかなり切なかったです。尾崎の部屋を出て行く場面はちょっとグッときてしまいました。

尾崎は身持ちが硬いわけではないけれど遊び人というわけでもありません。如月に想いを寄せながらも無理強いせず、距離を置いて包み助けようと思っていたんだと思う。
亜樹良さんの尾崎のイラストが凄くセクシーでかっこよくて、ちょっとクラクラしちゃいました。
ラストでは乙女ぶりも発揮して可愛いしね。

尾崎を「人間」として認識し愛情を感じることができるようになったのをきっかけに、少しずつ周りの人間達へ向ける目も変わっていくようになります。尾崎が全ての扉を開けてくれた…という言葉どおり、明るい未来を感じさせる終わり方はとてもよかったです。
いろんな意味で如月にとって尾崎は「ただ一人の男」で、タイトルはやっぱりこれが凄く合ってますね。
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