総てを彼の王(ロドニー)に奪われた。純潔も、子供らしい夢も、家族と過ごす少年期も、密やかな恋心さえも――。そして月日は流れ、今や氷の鎧を傷ついた心にまとい、退廃の日々を送るクリス。
一方クリスの元を去ったあと、貧しい労働者階級から英国有数の事業主までへと成り上がったロドニー。その二人が十年ぶりにロンドンで再会を果たした。
そこで彼らはある取引をすることになり…。
一方クリスの元を去ったあと、貧しい労働者階級から英国有数の事業主までへと成り上がったロドニー。その二人が十年ぶりにロンドンで再会を果たした。
そこで彼らはある取引をすることになり…。
ロドニー・ダンダス(29歳)×クリストファー・アシュトン(23~4歳くらい)
労働者階級出身でアシュトン家の元使用人、現在は青年実業家×名門アシュトン家の長男
「熱情の契約」雑誌掲載
「熱情の証」雑誌掲載を改稿
「love is blind」書き下ろしの三編。
二十世紀初頭の英国が舞台の、主従(元)、再会ものです。
二人の出会いはクリスが13歳、ロドニーが18歳の時です。アシュトン家の使用人だったロドニーがお坊ちゃまのクリスに乗馬の手解きをしたのをきっかけに二人は惹かれあいますが、二人ともあまりに未熟だったため、ロドニーはクリスを手酷く傷つけ別れてしまうことになります。
クリスとロドニーの関係は家族の知るところとなり、ロドニーが去ったあとのクリスは同性愛という禁忌を行ったものとして家族の蔑む目に苛まれ、精神科医や牧師によってその間違った行為を矯正されようとし、神に背いたとして罪の意識に苛まれるような日々を送ります。
そして10年経った現在、家族からは、厄介者払いのように遠ざけられ、英国を離れパリで遊興と退廃の日々を過ごすクリス。一方アシュトン家を去ったロドニーは、10年かけて事業を成功させ、社交界にも顔を出すほどに成功した青年実業家となっていました。
そんな二人が、あるパーティーで再会。
クリスはパリで知り合った悪友のティムに唆され、自分を捨てていったロドニーに復讐しようと決意します。
ロドニーがクリスと別れたあとに寄こした一通の手紙。それには男同士である二人に肉体関係があったことがわかるようなことが書かれています。成功したロドニーが同性愛者であると知れれば、この時代、ロドニーは社会から抹殺され総てを失うことになるでしょう。
クリスは手紙の存在を知らせ、ロドニーを脅そうとします。
子供の頃に芽生えた恋は、お互いにとって唯一無二のものだったのに、あまりに未熟で身勝手過ぎて相手の真実を見失い、これ以上ないほどに傷ついて愛と同じほどの憎しみをクリスに植えつけてしまいました。
「熱情の契約」は視点がクリス側ですが、ロドニーをこれ以上ないほど憎み復讐をしようとしているのに、同じくらいの強さで捨てられない愛を抱えていて、とても苦しくて痛ましい。正に愛憎物語というに相応しいと思います。
真瀬さんは初めて読んだと思うんですが、文章のリズムが心地よく、痛ましい物語なのにどんどん引っ張られていき、意外に短時間で読めてしまいました。
クリス側視点の表題作でも、雑誌掲載時のクリス視点から今回ロドニー視点に改稿されたいう「熱情の証」でも、ロドニーのクリスへの気持ちはとてもわかりやすく、10年前にクリスを傷つけた自分を悔い、会えなかった間も再会してからも、クリスを想う深い愛情を感じることができるのですが、どんなに真摯な言葉を尽くしても、受け入れることができないクリス、受け入れてもらえないロドニー、どちらもかなり辛かったです。
しかし、舞台が二十世紀初頭の英国で、文章もそういう効果を狙った書き方をされているので、すごく辛い話なのにどこか「ファンタジー」を読んでいるような心地がして、イタさみたいなものはほとんど感じられません。。
十年前、愛情は本物だったのに、未熟や無知というのは罪なんだなぁと何だか実感させられました。同性愛への偏見や差別が現在の比ではないほどの罪であったため、もし擦れ違っていなくても障害の多い恋だったろうとは思いますが…。
どんな言葉でも態度でも相手に伝わらないというのは辛いですねぇ。ロドニーも辛いんですが、そんな風になってしまったクリスを思うとやはり10年前のことが悔やまれる。
だからこそ、書き下ろしでのクリスとロドニーの幸せそうな様子には、とても安心させられました。
この時代の雰囲気をとてもよく掴んでいるし、心理面も非常に丁寧で、視点を変えることによってどちら側にも感情移入できる、読み応えのあるお話になっていたと思います。
雑誌掲載時はクリス視点だったという「熱情の証」ですが、視点をロドニーに変えたことで、より双方とも深く理解できるようになっていると思います。こうなるとちょっとクリス視点にも興味が出てきますけどね。
そういえば、Hはぼかしたシーンばっかりでした。でも読み終わったあとに気づいて、途中で気にならなかったんですね。意外な面白さで、得した気分。めっけもんでした。
労働者階級出身でアシュトン家の元使用人、現在は青年実業家×名門アシュトン家の長男
「熱情の契約」雑誌掲載
「熱情の証」雑誌掲載を改稿
「love is blind」書き下ろしの三編。
二十世紀初頭の英国が舞台の、主従(元)、再会ものです。
二人の出会いはクリスが13歳、ロドニーが18歳の時です。アシュトン家の使用人だったロドニーがお坊ちゃまのクリスに乗馬の手解きをしたのをきっかけに二人は惹かれあいますが、二人ともあまりに未熟だったため、ロドニーはクリスを手酷く傷つけ別れてしまうことになります。
クリスとロドニーの関係は家族の知るところとなり、ロドニーが去ったあとのクリスは同性愛という禁忌を行ったものとして家族の蔑む目に苛まれ、精神科医や牧師によってその間違った行為を矯正されようとし、神に背いたとして罪の意識に苛まれるような日々を送ります。
そして10年経った現在、家族からは、厄介者払いのように遠ざけられ、英国を離れパリで遊興と退廃の日々を過ごすクリス。一方アシュトン家を去ったロドニーは、10年かけて事業を成功させ、社交界にも顔を出すほどに成功した青年実業家となっていました。
そんな二人が、あるパーティーで再会。
クリスはパリで知り合った悪友のティムに唆され、自分を捨てていったロドニーに復讐しようと決意します。
ロドニーがクリスと別れたあとに寄こした一通の手紙。それには男同士である二人に肉体関係があったことがわかるようなことが書かれています。成功したロドニーが同性愛者であると知れれば、この時代、ロドニーは社会から抹殺され総てを失うことになるでしょう。
クリスは手紙の存在を知らせ、ロドニーを脅そうとします。
子供の頃に芽生えた恋は、お互いにとって唯一無二のものだったのに、あまりに未熟で身勝手過ぎて相手の真実を見失い、これ以上ないほどに傷ついて愛と同じほどの憎しみをクリスに植えつけてしまいました。
「熱情の契約」は視点がクリス側ですが、ロドニーをこれ以上ないほど憎み復讐をしようとしているのに、同じくらいの強さで捨てられない愛を抱えていて、とても苦しくて痛ましい。正に愛憎物語というに相応しいと思います。
真瀬さんは初めて読んだと思うんですが、文章のリズムが心地よく、痛ましい物語なのにどんどん引っ張られていき、意外に短時間で読めてしまいました。
クリス側視点の表題作でも、雑誌掲載時のクリス視点から今回ロドニー視点に改稿されたいう「熱情の証」でも、ロドニーのクリスへの気持ちはとてもわかりやすく、10年前にクリスを傷つけた自分を悔い、会えなかった間も再会してからも、クリスを想う深い愛情を感じることができるのですが、どんなに真摯な言葉を尽くしても、受け入れることができないクリス、受け入れてもらえないロドニー、どちらもかなり辛かったです。
しかし、舞台が二十世紀初頭の英国で、文章もそういう効果を狙った書き方をされているので、すごく辛い話なのにどこか「ファンタジー」を読んでいるような心地がして、イタさみたいなものはほとんど感じられません。。
十年前、愛情は本物だったのに、未熟や無知というのは罪なんだなぁと何だか実感させられました。同性愛への偏見や差別が現在の比ではないほどの罪であったため、もし擦れ違っていなくても障害の多い恋だったろうとは思いますが…。
どんな言葉でも態度でも相手に伝わらないというのは辛いですねぇ。ロドニーも辛いんですが、そんな風になってしまったクリスを思うとやはり10年前のことが悔やまれる。
だからこそ、書き下ろしでのクリスとロドニーの幸せそうな様子には、とても安心させられました。
この時代の雰囲気をとてもよく掴んでいるし、心理面も非常に丁寧で、視点を変えることによってどちら側にも感情移入できる、読み応えのあるお話になっていたと思います。
雑誌掲載時はクリス視点だったという「熱情の証」ですが、視点をロドニーに変えたことで、より双方とも深く理解できるようになっていると思います。こうなるとちょっとクリス視点にも興味が出てきますけどね。
そういえば、Hはぼかしたシーンばっかりでした。でも読み終わったあとに気づいて、途中で気にならなかったんですね。意外な面白さで、得した気分。めっけもんでした。
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