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ドロップアウト
佐々木 禎子著 / 実相寺紫子イラスト
講談社
X文庫ホワイトハート(2007.4)


白衣の堕天使――無資格医師、能瀬修哉。彼の診療所には、理由ありの患者たちが集ってくる。
ある日、劉華勝がやってきた。相変わらず、野獣のような危険な匂いを放って。五年ぶりの突然の訪いだ。華勝はかつて、修哉を追いつめたのだ。逃げなければならないほどの激しさで。
再び見つめあうふたりは、ただ堕ちてゆくだけなのか……。
劉華勝(リュウワセン/アンディ・リウ・29歳)×能瀬修哉(のせしゅうや・28歳)
香港マフィア×無資格医師

修哉は新宿で無資格ながら診療所を営んでいます。医学部には通ったものの、父との諍いのため修哉は大学を中退してしまい、家を飛び出してしまいました。流れ着いたところが現在の場所で、縁あってそこで診療所を開くことになったのです。
そこへ、修哉のドロップアウトの要因となった男、香港マフィアの劉華勝がやってきます。

二人は、修哉が大学に通っていたとき、旅行で香港へ向かう飛行機の中で知り合いました。強引ながら紳士的な『アンディ・リウ』と名乗るその男の案内で、修哉は香港の滞在を楽しみますが、姉から『アンディ・リウ=劉華勝』で、彼は香港マフィアの幹部だと聞かされ、親しくしていることを咎められます。
華勝が正体を黙って自分に近づき親切にしていたことに裏切られたと感じた修哉は華勝にもう会わないと告げます。ところがとたんに豹変した華勝に、二日間監禁され薬を使われたあげくに無理矢理抱かれてしまいます。その後「帰りたいなら帰れ」と言われ傷ついた修哉は日本へ帰国しますが、修哉を手に入れようとする華勝が友人や家族を脅し、そのせいで、男とつきあっていることが父にバれ…修哉の人生が大きく変わることになったのです。

もし本当に華勝から逃げたいのであれば、中国や香港のマフィアも多くいる新宿などにいるよりも、辺境の田舎に身を隠す方が得策だったわけですが、今の場所を選んだ事自体、修哉はどこかで華勝が追いかけてきてくれるのを待っていたんですね。
しかし、五年を経て現われた華勝が今更何をしにきたのか…。
「迎えに来た」と言われても信じられませんし、華勝が何をそこまで自分に執着するのかもわからず、また何も知らずにいた五年前とは違い、修哉も成長していて、華勝と駆け引きのできる大人の年齢になっていました。

お坊ちゃん育ちで若くてウブで、華勝が好きだったのに闇の世界や華勝の激しさに怯え逃げてしまった修哉ですが、五年の月日を経て、自分も無資格医師としてアウトローな世界で生き、大人になった…という、修哉のその成長ぶりがいいですね。そして華勝も、五年経って、大人の余裕、力の抜き加減を覚えたというのかな。
華勝が好きで、華勝の腕の中にいても、簡単に本当には堕ちないぞ、という風情の修哉と、以前より余裕ができたような華勝の大人っぽいやりとりが素敵でした。実際は二人とも相手にベタ惚れなのは丸分かりなんだけど、すぐにくっつきそうでくっつかない、微妙な距離がなんだかいいんですよ。。
修哉を迎えにきたけれど、修哉は成長して無理矢理連れ去れるような男ではなくなっていた。だから待つ。この引いた感じの華勝がいいです。マフィアっていうと好き勝手しそうなイメージがあるじゃないですか(笑)
裏の顔はもちろん怖いわけだけど、紳士と野獣が見え隠れするような、そのバランスが大人っぽくてかっこいいと思うし、また実相寺さんのイラストの華勝がとても合っていて、すごくいいです。

華勝が新宿に現れ、修哉の元に出入りするようになり、歌舞伎町界隈の暴力団も華勝の同行に注目するようになります。それに伴い、診療所が突然繁盛したり、電話を盗聴されたり…。そんなことがありながらも、ちょっとボンヤリさんな修哉は自分の周りで起きつつあることに気づかないんですが、そのせいで、表面的には何も起きていないような静かな展開が続きます。
しかし、突然修哉が拉致されることによって、一気に話が動きラストへと繋がる展開。あまり影の陰謀とか派手な出来事が前面に出ず、動いてもごく短く済んでしまいます。変にドンパチに走るんではなく、華勝と修哉の関係をじっくり堪能できて、それが個人的には良かったですね。

周りを固める脇も、個性的で面白そうな人物が何人も出ていて、このまま終わったらもったいないような気がします。
香港行きの往復チケットもいただいたことですし、香港を舞台にもうひとつお話があってもいいですよね。
佐々木さんて、1年ぶりくらいに読んだかも。
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