イラスト:今市子(アクア文庫)
モデルのような容姿のベストセラー作家、太夏志(たかし)が強引に
自分のものにした詩草(しぐさ)。優しく綺麗なうえに秘書としても
有能な詩草は、申し分のない恋人だ。
ただ、常にクールでつかみどころのない性格は、同居を始めてからも
変わることはなかった。
ところが伯父の葬儀のため出かけた詩草が、戻ってきたときには
13年分の記憶をなくしていた。
いつもと違い、無防備に寄りかかってくる少年のような詩草に、
太夏志は戸惑いながらも新しい愛情を感じはじめて―!?
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黒沢太夏志(くろさわたかし・33歳)×上野詩草(うえのしぐさ・24歳)
「夢の卵」 初出・1998年新書発行
「春宵一刻」書き下ろし の二編収録されています。
記憶喪失のお話ですが単に記憶を無くしているのではなく、
詩草は今の年齢から13年間遡って11歳の少年となってしまいます。
いつも冷静で感情を顕にせず有能な秘書だった詩草を愛していた太夏志ですが、
11歳になった詩草は頼りなく、自分に起きたことに戸惑い脅えた少年で、
それまでめったに見ることのなかった甘えや笑顔を見せる詩草に、
太夏志はだんだんと惹かれていきます。
詩草の抱えたトラウマを探すことと、それを治すことがお話の流れの中心ですが、
心に残ったのは太夏志の想いの方でした。。
詩草を元に戻すために奔走しながらも、太夏志は子供のままの詩草に
愛情を感じはじめます。
詩草でありながら詩草ではなく、詩草ではないはずなのにそれは間違いなく
子供の頃の詩草本人であるという、とても複雑なジレンマを太夏志は抱えることに
なります。
子供の詩草の「僕でいいの?」という問いに「どちらも好きだ」と答える太夏志ですが、
子供の詩草を愛しおしく想いながらも、詩草が一瞬だけ元に戻った時には
心からの安堵を感じてしまい、子供の詩草にたいして罪悪感を感じます。
そして詩草が完全に元に戻ったときには哀しい喪失感を感じ、
大人の詩草への罪悪感を覚える。
そのへんの戸惑いや葛藤なんかの心理面がとても上手く書かれていました。
詩草のトラウマを探るストーリーでありながら、
この経験によって一番変わったのはやはり太夏志じゃないかな、と思います。。
こうなる前と後では太夏志の詩草への愛情はより深いものへと
変わっているように感じます。
以前も真剣であることは間違いなかったですが愛し方が変わるっていうんですかね…。
どちらかというと押し付けることが多かった太夏志の愛情は、
詩草の心理の深い部分に触れたことで、さらに相手を理解して
包み込むような暖かいものに変化したように思えました。
二人の関係もまた深いものになっていくだろうし、詩草の方も
この出来事と太夏志によって、心をもっと開いていくだろうと思います。
いなくなってしまった「子供の詩草」を愛おしむ太夏志の気持ちがちょっと切ないです。
どちらも「詩草」なんですけど…ああ、複雑。
そのへんの心理がホントに上手い。
綺麗な文章でしっとり淡々と語られています。
静かで不思議な感じのする読後感でした。
「夢の卵」って…誰もが抱え持っている大切な暖かいもの…
子供だったり、自分のやりたい夢だったり、愛する人だったり…そしてそれを
暖めて持ち続けている人や、壊れかけてしまった人、粉々に壊してしまった人、
破片が胸に刺さってしまった人…
そんな人たちのお話なのかな~と、ちょっと思いました。
それにしても感想にこんなに悩むのはそうないくらい
書くのが難しかったです。
感じたことや、お話の良さの半分も言葉にできなかった。
甚だ心もとない気持ちであります。
見当違いなことになってたらすみません。
黒沢太夏志(くろさわたかし・33歳)×上野詩草(うえのしぐさ・24歳)
「夢の卵」 初出・1998年新書発行
「春宵一刻」書き下ろし の二編収録されています。
記憶喪失のお話ですが単に記憶を無くしているのではなく、
詩草は今の年齢から13年間遡って11歳の少年となってしまいます。
いつも冷静で感情を顕にせず有能な秘書だった詩草を愛していた太夏志ですが、
11歳になった詩草は頼りなく、自分に起きたことに戸惑い脅えた少年で、
それまでめったに見ることのなかった甘えや笑顔を見せる詩草に、
太夏志はだんだんと惹かれていきます。
詩草の抱えたトラウマを探すことと、それを治すことがお話の流れの中心ですが、
心に残ったのは太夏志の想いの方でした。。
詩草を元に戻すために奔走しながらも、太夏志は子供のままの詩草に
愛情を感じはじめます。
詩草でありながら詩草ではなく、詩草ではないはずなのにそれは間違いなく
子供の頃の詩草本人であるという、とても複雑なジレンマを太夏志は抱えることに
なります。
子供の詩草の「僕でいいの?」という問いに「どちらも好きだ」と答える太夏志ですが、
子供の詩草を愛しおしく想いながらも、詩草が一瞬だけ元に戻った時には
心からの安堵を感じてしまい、子供の詩草にたいして罪悪感を感じます。
そして詩草が完全に元に戻ったときには哀しい喪失感を感じ、
大人の詩草への罪悪感を覚える。
そのへんの戸惑いや葛藤なんかの心理面がとても上手く書かれていました。
詩草のトラウマを探るストーリーでありながら、
この経験によって一番変わったのはやはり太夏志じゃないかな、と思います。。
こうなる前と後では太夏志の詩草への愛情はより深いものへと
変わっているように感じます。
以前も真剣であることは間違いなかったですが愛し方が変わるっていうんですかね…。
どちらかというと押し付けることが多かった太夏志の愛情は、
詩草の心理の深い部分に触れたことで、さらに相手を理解して
包み込むような暖かいものに変化したように思えました。
二人の関係もまた深いものになっていくだろうし、詩草の方も
この出来事と太夏志によって、心をもっと開いていくだろうと思います。
いなくなってしまった「子供の詩草」を愛おしむ太夏志の気持ちがちょっと切ないです。
どちらも「詩草」なんですけど…ああ、複雑。
そのへんの心理がホントに上手い。
綺麗な文章でしっとり淡々と語られています。
静かで不思議な感じのする読後感でした。
「夢の卵」って…誰もが抱え持っている大切な暖かいもの…
子供だったり、自分のやりたい夢だったり、愛する人だったり…そしてそれを
暖めて持ち続けている人や、壊れかけてしまった人、粉々に壊してしまった人、
破片が胸に刺さってしまった人…
そんな人たちのお話なのかな~と、ちょっと思いました。
それにしても感想にこんなに悩むのはそうないくらい
書くのが難しかったです。
感じたことや、お話の良さの半分も言葉にできなかった。
甚だ心もとない気持ちであります。
見当違いなことになってたらすみません。
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