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理不尽な熱情
洸著 / 小山田 あみ〔画〕
雄飛
アイノベルス(2007.4)


ルポライターの矢上は、父の無実を証明するため父が殺したとされる被害者の息子・浅倉に取材と称して近づいた。
彼に正体がばれ、首を突っ込むなと脅されながらも調べを進める矢上。
だが、見知らぬ男たちからの脅迫、拉致と身辺が騒がしくなり、浅倉が真犯人ではないかと疑い始める。
その一方で、怜悧な瞳の奥に熱情を潜ませた男に、惹かれてしまう感情を抑えることができず…。
浅倉誠吾(あさくらせいご・30歳)×矢上達之(やがみたつゆき・24歳くらい?)
輸入会社専務×ルポライター

サスペンス風です。
アメリカでルポライターをしている矢上の書いたドキュメンタリーがベストセラーになり、日本の出版社の「日本の企業を題材にして本を書かないか」と依頼を受けた矢上は10年ぶりに日本に帰ってきます。
題材に選んだのは『浅倉コーポレーション』。
10年前矢上が中学生のとき、浅倉コーポレーションの社長と矢上の両親の3人が、矢上の父の経営する建築会社の火事で焼死しました。原因は、浅倉と矢上の母の不倫に逆上した父が、二人を殺し、灯油を被って自分も焼身自殺したとされ、センセーショナルな事件は当時マスコミを賑わしました。その事件を機に矢上は叔父に引き取られてアメリカに渡ります。
事件から10年が経ちましたが、矢上は両親の様子やその性格から、父が事件を引き起こしたとされていることに疑問を持っていました。酒に弱く、飲むとすぐに気分が悪くなって眠ってしまう父が、当時泥酔状態だったこと、夫婦の仲は良かったこと、周りの従業員も誰もおかしな様子に気づいていないこと…。
浅倉コーポレーションは社長の死後、弟が社長を務め、その頃大学生だった息子・誠吾は現在は専務として浅倉コーポレーションを実質的に動かす若き青年実業家として有名になっており、矢上の取材にはうってつけでした。

取材を進める裏で、矢上は当時の真相をも探り出そうとします。
取材の許可を貰い、実際にあった浅倉(誠吾)と挨拶をすませると、矢上は何気なく10年前の事件のことを尋ねてみます。すると浅倉の態度は一変。父の死については触れるな、触れたらこの話は終わりだと一方的に告げられ矢上は引き下がりますが、そのあと会った現社長からも、取材を続けたいならそのことに触れるなと釘を刺されます。
しかし、独自に調査を始めた矢上は、ある日数人の男たちに拉致されてしまいます。


あらすじから、ハードボイルドな雰囲気なのかな~と思っていたんですが、そうではなかったですね。
洸さんは他社の刑事モノでも、地道に足で情報を集めて真相に近づいていく形式を取られていて、今回もその線に近かったです。
元々淡々と生真面目というか変に煽らない硬めな印象のある洸さんですが、浅倉と矢上の関係が「殺人者の息子とその被害者の息子」というキツイものでありながらイタさを感じないのは、洸さんの文章とキャラの性格によるところも大きいように思います。
設定からすると、もっと緊張感があったり、父の汚名を晴らそうとする矢上に切羽詰った感じがあってもおかしくないですが、矢上には適度に緩みがあって、好奇心いっぱいのおハネさんでもあり、浅倉の前に出ると、その心中はただの「恋する人」になってしまってるので、あんまりギリギリの感じはないのですね。
浅倉は、父があんな死に方をしたあとは矢上のように日本を離れることもできず、「被害者の家族」としてマスコミの標的に曝されて、事件のショックで母は病み、大学を休学して働いたり母の面倒を見たりとかなり苦労させられています。最近になってやっと良くなった母のために事件を蒸し返すことは阻止したいと思っていますが、では「自分の父を殺した男の息子」である矢上に対してはどうかというと、恨みとかは全然感じられません。
矢上が浅倉に会った第一印象を「海賊」のような男だと言っていますが、頻繁にこの比喩が出てくる上、矢上のピンチには浅倉が必ず現れて助けてくれるので、ロン毛を靡かせてヒロインのピンチには必ず現れ、不敵に笑う海賊のビジュアルが頭に浮かんでしまい、ハードボイルドどころではありません(笑)。

そうは言っても、派手な展開で勝手に事態が動いていくのではなく、足と耳で少しずつ情報を集めて真相に近づこうとする展開は、推理小説みたいで楽しめました。登場人物が少ないので大元の悪者はすぐ想像つくんですけどね。どういう経緯で・・・というのはやはり興味を惹かれますし。事件の全容の落しどころとしては、上手いところじゃないでしょうか。
実は再会の要素もあるんですが、このエピソードはベタだけど好きです。


雄飛さんの最後のノベルスということになってしまったんですね。
早々に下げてしまったところもあるようですが、うちの近所の本屋さんの何件かにはまだ置いてありました。
それにしても、巻末の「5月の新刊案内」が、物悲しいです。北畠さんイラストのやつ、読みたかったなぁ。
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