イラスト:門地かおり(ディアプラス文庫)
母は街一番の美貌を謳われた芸妓。
その母に生き写しの廉(れん)は、客として花街にやってきた
学生・達臣(たつおみ)と出逢い、急速に惹かれあう。
ふたりは街を出て共に暮らそうと誓い合うが、約束の日、
達臣は現われなかった。桜の花弁舞う中、廉はいつまでも待ち続けた。
その日から二年。達臣を忘れ、花街で生きることを決めた廉は、
娘を買いに訪れた寒村で、鉱山社長となった達臣と再会する…。
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近本達臣(ちかもとたつおみ・23歳)×橋口廉(はしぐちれん・18歳)
「落花の雪に踏み迷う」雑誌掲載
「胡蝶の夢に浮き泊る」雑誌掲載
「月光」書き下ろし の三編収録されています。
久我さん初の時代ものということです。時は大正時代。
大阪弁であるのはいつものとおりですが、時代や花街という舞台に、
大阪弁がいつも以上にシックリ合っていて、雰囲気を盛り上げていると思いました。
タイトルもいいですよねぇ。綺麗で。
内容にもとても合ってると思います。
芸妓の子供として生まれ、早死した母のかわりに茶屋を営む老婆に
育てられた廉は、ある晩、近本達臣という学生と知り合いました。
それから毎晩のように待ち合わせをするようになった二人は次第に惹かれあい、
花街を嫌う廉に達臣は二人で街を出ようと誘い、翌日の早朝、桜の木の下で
待ち合わせることを約束します。
ところが達臣はいくら待っても現われず、それでも達臣を信じて待ち続けた
廉は、やがて時が過ぎ二年も経とうとするころには、騙され裏切られたと悟り、
花街の「人買い」として生きていくことを決意します。
そして初めての仕事の日、山間の寒村を訪れた廉の前に鉱山の社長となった
達臣が現われて…。
達臣が約束の場所に現われなかったのは、周りの大人達が揃って
二人を引き裂こうと画策したからです。
離れていた間も、達臣は一週間に一度は手紙を書き廉に送っていましたが、
届いた手紙は全て街の大人たちによって隠されていました。
そんなこととは知らない廉は、達臣に騙されたと傷つき、
再会しても達臣の言葉を信じることができません。
こういう時代ならではの悲恋だと思います。
先に書いたように、大正という時代背景と大阪弁の相乗効果で
とても雰囲気のあるお話になっています。
達臣を信じたいと思うのに不信感が拭えず苦しむ廉。
達臣の気持ちは全く変わらないどころか、廉を迎えにくるために達臣は達臣で
必死に二年を過ごしてきたというのに、達臣がいくら言葉をつくしても
「もう遅い」と感じてしまう廉はとっても切ない。
それでも、達臣の身に危険が及んだ時、達臣を守ろうと鉈で3人の暴徒を倒し、
(廉はもの凄く強い!)
自分も瀕死になりながら達臣の腕に倒れたシーンはちょっと泣けちゃいました。
「胡蝶の夢に浮き泊る」は、一緒に暮らし始めた二人のお話です。
廉と再会するために、誰にも邪魔されない力を得ようと必死になるあまり
達臣は非情さを非情と思わない、目的のためには手段を選ばず、まわりの人間を
省みることもない冷酷な男になっていました。
廉にだけは過保護ともいえる優しさと愛情で接するものの、他人へは容赦がなく
そのあまりの冷酷さに、廉は達臣の身が心配になります。
廉に逢うことだけを目的として、離れていた時間を生きてきた達臣は、
廉しか見えない故に、人としての大事な部分が壊れてしまっています。
何がひどいことなのかさえわからなくなってしまった達臣は、見ていて
こちらも苦しくなりました。
(反面、よく考えるとなんだか萌える)
廉の死を恐れ、廉の名前を叫ぶ達臣は、
おそらく廉がいなくなったら、そのまま本当に壊れてしまうでしょう。
廉より大切なものは何もないんだなと、その愛の深さが強く伝わってくる、
好きなシーンです。
達臣の非情さも、冷酷さも、傲慢さも、全ての根源は廉への何者にも変えられない
愛にあります。
その愛のために達臣が壊れてしまったとしたら、廉はやりきれないと思います。
それでもきっとそんな達臣を愛しく思い、守り続けようとするんでしょうね。
計り知れないほど深い、お互いがどうなっても決して変わらない愛を感じます。
最後に達臣が変わることができたのはホントに安心しました。
実は二人は異母兄弟です。
この設定には正直「なぬ?!」と思わないでもありません。
というかかなり気になります。
が、本文中では兄弟であることはほとんど問題にされていません。
ほんの少しの言及があるだけ。
そのことについていいか悪いかを物語中で判断しなければならないような
展開はありません。
ある意味それは大変有難かったですね。
兄弟であることがいいか悪いかを問われてしまえば、
個人的にはどうしても否、と答えるしかないので…。
そのへんが問題にされていなかったため、兄弟であることの是非を考えずに済み、
廉と達臣の愛だけに集中できて、いい部分を味わえたかなと思います。
ページ数もたっぷりなので、かなり読み応えあり。
お互いの愛の強さがひしひしと伝わってきました。
面白かったです。
近本達臣(ちかもとたつおみ・23歳)×橋口廉(はしぐちれん・18歳)
「落花の雪に踏み迷う」雑誌掲載
「胡蝶の夢に浮き泊る」雑誌掲載
「月光」書き下ろし の三編収録されています。
久我さん初の時代ものということです。時は大正時代。
大阪弁であるのはいつものとおりですが、時代や花街という舞台に、
大阪弁がいつも以上にシックリ合っていて、雰囲気を盛り上げていると思いました。
タイトルもいいですよねぇ。綺麗で。
内容にもとても合ってると思います。
芸妓の子供として生まれ、早死した母のかわりに茶屋を営む老婆に
育てられた廉は、ある晩、近本達臣という学生と知り合いました。
それから毎晩のように待ち合わせをするようになった二人は次第に惹かれあい、
花街を嫌う廉に達臣は二人で街を出ようと誘い、翌日の早朝、桜の木の下で
待ち合わせることを約束します。
ところが達臣はいくら待っても現われず、それでも達臣を信じて待ち続けた
廉は、やがて時が過ぎ二年も経とうとするころには、騙され裏切られたと悟り、
花街の「人買い」として生きていくことを決意します。
そして初めての仕事の日、山間の寒村を訪れた廉の前に鉱山の社長となった
達臣が現われて…。
達臣が約束の場所に現われなかったのは、周りの大人達が揃って
二人を引き裂こうと画策したからです。
離れていた間も、達臣は一週間に一度は手紙を書き廉に送っていましたが、
届いた手紙は全て街の大人たちによって隠されていました。
そんなこととは知らない廉は、達臣に騙されたと傷つき、
再会しても達臣の言葉を信じることができません。
こういう時代ならではの悲恋だと思います。
先に書いたように、大正という時代背景と大阪弁の相乗効果で
とても雰囲気のあるお話になっています。
達臣を信じたいと思うのに不信感が拭えず苦しむ廉。
達臣の気持ちは全く変わらないどころか、廉を迎えにくるために達臣は達臣で
必死に二年を過ごしてきたというのに、達臣がいくら言葉をつくしても
「もう遅い」と感じてしまう廉はとっても切ない。
それでも、達臣の身に危険が及んだ時、達臣を守ろうと鉈で3人の暴徒を倒し、
(廉はもの凄く強い!)
自分も瀕死になりながら達臣の腕に倒れたシーンはちょっと泣けちゃいました。
「胡蝶の夢に浮き泊る」は、一緒に暮らし始めた二人のお話です。
廉と再会するために、誰にも邪魔されない力を得ようと必死になるあまり
達臣は非情さを非情と思わない、目的のためには手段を選ばず、まわりの人間を
省みることもない冷酷な男になっていました。
廉にだけは過保護ともいえる優しさと愛情で接するものの、他人へは容赦がなく
そのあまりの冷酷さに、廉は達臣の身が心配になります。
廉に逢うことだけを目的として、離れていた時間を生きてきた達臣は、
廉しか見えない故に、人としての大事な部分が壊れてしまっています。
何がひどいことなのかさえわからなくなってしまった達臣は、見ていて
こちらも苦しくなりました。
(反面、よく考えるとなんだか萌える)
廉の死を恐れ、廉の名前を叫ぶ達臣は、
おそらく廉がいなくなったら、そのまま本当に壊れてしまうでしょう。
廉より大切なものは何もないんだなと、その愛の深さが強く伝わってくる、
好きなシーンです。
達臣の非情さも、冷酷さも、傲慢さも、全ての根源は廉への何者にも変えられない
愛にあります。
その愛のために達臣が壊れてしまったとしたら、廉はやりきれないと思います。
それでもきっとそんな達臣を愛しく思い、守り続けようとするんでしょうね。
計り知れないほど深い、お互いがどうなっても決して変わらない愛を感じます。
最後に達臣が変わることができたのはホントに安心しました。
実は二人は異母兄弟です。
この設定には正直「なぬ?!」と思わないでもありません。
というかかなり気になります。
が、本文中では兄弟であることはほとんど問題にされていません。
ほんの少しの言及があるだけ。
そのことについていいか悪いかを物語中で判断しなければならないような
展開はありません。
ある意味それは大変有難かったですね。
兄弟であることがいいか悪いかを問われてしまえば、
個人的にはどうしても否、と答えるしかないので…。
そのへんが問題にされていなかったため、兄弟であることの是非を考えずに済み、
廉と達臣の愛だけに集中できて、いい部分を味わえたかなと思います。
ページ数もたっぷりなので、かなり読み応えあり。
お互いの愛の強さがひしひしと伝わってきました。
面白かったです。
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