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彼の背に甘い爪痕を残し
鳩村 衣杏 / 鳩村 衣杏著
ムービック (2005.5)
通常24時間以内に発送します。
イラスト:ひたき(ゲンキノベルス)

ある事件のせいで筆を絶った小説家の音弥(おとや)は、
出版翻訳代理店でバイトを始める。
人と関わることを怖れる音弥に上司で腕利きのエージェントの
峻介(しゅんすけ)は、優しい笑顔を向ける。
意外と不器用で嘘の無い峻介の生き方に次第に惹かれていく音弥は
ある本の翻訳を勧められ…。
--------------

英峻介(はなぶさしゅんすけ・31歳)×仲江音弥(なかえおとや・24歳)


音弥は高校2年のとき「真淵匠(まぶちたくみ)」というペンネームで
文芸雑誌に投稿した小説が認められて以来、大学生作家として活躍していました。
ところが大学三年のとき、大きな文学賞にもノミネートされた四作目の
小説に影響された女子高生が、自殺未遂を起こしてしまいます。
「真淵匠」の名前とともに新聞やTV、週刊誌で事件が取り上げられ、
周囲の目は音弥に冷たくはなかったものの、ショックを受けた音弥は
書くことを続けられなくなり、逃げるように単身で渡米していました。
そして一年半後、「真淵匠」としてではなく「仲江音弥」として
生きることをようやく決心して日本に戻り、父の友人のつてを頼って
出版翻訳代理店でアルバイトを始めます。
自分が書いた物、紡いだ言葉が人を傷つけたことに恐怖を感じた音弥は、
人と接すること、深く関わることに脅えずにはいられません。
ですが、音弥は英峻介の優しさに触れ少しずつ心を開いていきます。
そして実は当の峻介にも、驚くような過去がありました。

少しずつお互いを理解し心を開いていくのが、
日常の仕事の風景に上手く組み込まれていてとても自然です。
日本の出版社と海外の出版社(版元)との間を取り持つ代理店という
仕事も興味深い。

表紙の俊介は趣味の悪いTシャツを着ているわけではなく、
よくみればわかるとおりこれは刺青です。
峻介の過去についてはこれだけで想像できるものの、出版社で
腕利きのエージェントとして働く俊介はとても穏やかで静かな語り口の
インテリっぽい優しい印象です。
そんな峻介が過去の片鱗を覗かせる場面もありますが、イラストのイメージとも
相まって、そのギャップがなんだかセクシー。
とても不器用でしょっちゅう物をバラ撒いてしまうんですが、
想像するととても可愛いです。
いろんなギャップが峻介の人物を形作って見せて、
それがなかなかに魅力的です。
音弥は人と関わることを怖がっているせいか、オドオドとして内気な印象ですが、
いざというときには、物をキチンと言うタイプ。
峻介にくらべると可愛い部分や子供っぽさが目立ちますが、
それだけではない芯の強さも感じます。
もともとは物怖じしない明るい性格だったということもありますが
ラスト近くで大手出版社社長に対峙する音弥は、オトコマエで格好いいです。

音弥、峻介、そして二人の過去と、音弥の知らなかった過去からの
二人の繋がりが明らかになってくると、小さな伏線があったことに
気づかされて、上手いなぁと思いました。
音弥と峻介の過去と今を綺麗に結びつけていて、いいエピソードがたくさん
あります。
小さくて見過ごしてしまうようなことが、
あとから、そうだったのか~と意味があったことに気づかされます。
音弥のことをずっと見守ってきた峻介。
そして俊介は過去の音弥に、音弥は今の峻介にお互いに癒されているのが
すごくいいなと思います。

峻介に勧められて音弥が翻訳する本の邦題を「回青橙(かいせいとう)の夜」と音弥が
訳すんですが、この「回青橙の夜」という本もお話の大事な部分になっていますが、
「回青橙」という木も、音弥の心を表すものとして非常にに象徴的に使われていて、
これがまたとってもいいんです。

「回青橙」とは橙の木のことで、
夏には青かった実が冬には橙色になり、それを収穫せずにおくと朽ちることなく、
夏にはまた青くなるということからきた名前だそうです。
お正月の注連飾り使われてるアレにいろんな深い意味があるとは知りません
でした。
この本のおかげで注連飾りを見る目が変りそうです。

きちんと細かいところまでプロットをたてて書かれたお話という感じで、
非常に綺麗にまとまっていました。
とても優しい気持ちになれるお話でした。
かなりいい感じで、好きなお話です。

「彼の背」=「刺青」ということで
タイトルがなんとなく色っぽく感じられていいですねぇ。
P241のイラストの峻介がいいなぁー。
おまけの四コマの峻介は可愛くて笑えます。
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