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もうひとつのドア
月村 奎
新書館 (2001.12)
通常2~3日以内に発送します。
月村奎/黒江ノリコ

―君はこれからきっと幸せになれる。
生きる希望もなく、不幸に慣らされていた広海(ひろみ)に
そう言ってくれたのは、大きくて暖かい手を持つ三夜沢(みよさわ)だった。
理不尽な借金に追われる十七歳の広海は、
バイト先の客として現われた少女とその父親・三夜沢と知り合う。
娘に冷たく見えた男に、はじめは反発を覚えるものの、
いつしか三夜沢の不器用なやさしさに惹かれ―。
----------------

三夜沢×広海。
歳の差一回りくらい?の年上攻めです。

ですが、どっちが受けでどっちが攻めというのはあまり関係なく、
広海(ひろみ)自身の物語という感じでした。

悲惨な生い立ちと経験に、何もかもを諦めて自分の殻に閉じこもって生きてきた広海が、
初めて人の親切や愛情に触れて戸惑い、疑い、躊躇しながら、
やがて硬く閉ざした部屋の中から新しいドアを開けてそれまでとは違う世界に
踏み出していくまで…のお話です。
「もうひとつのドア」というタイトルが、ラスト近くなって沁みてきます。

広海の寂しさや悲しみやが全編を覆っていて、その痛々しさにこっちの胸も
痛みます。こんなふうに生きてきたなんて、あんまり可哀相過ぎる。

月村さんの心理描写の上手さと丁寧さのおかげか、
これ以上ないほど厭世的で後ろ向きな広海ではありますが、
意外にのめり込んでしまいました。

どちらかというと個人的には「ウジウジすんな!」と言いたくなるタイプなんですが、
広海には「可哀相に、辛かったんだねぇ…」と声をかけてあげたくなるのです(笑)
月村さんにすっかり乗せられてます。

広海の心理が中心で、三夜沢と広海の経緯にはいわゆる「萌え」は正直言って、
私には感じられなかったです。
広海の「生まれ変わり」の物語で、三夜沢と広海のすったもんだがメインでは
ないように思いました。

ですが、本当に丁寧にじっくりと広海の心の変化を読み取ることができ、
かなり読み応えのあるお話だったと思います。

こういうお話なんで、三夜沢の扱いは、かなり物足りない気はしました。
三夜沢の側の気持ちはあまり伝わってこないんですよね。

それでもなんというか…とっても濃い読後感でした。
涙腺の弱い方はキちゃうかもしれません。

とっても真面目なBLです。(へんないい方ですが)
決して暗く重いだけではありません。
たまにはこういうのもいいんじゃないかなぁ。
家族、愛情、幸せ、希望。そんなものの大切さが身に沁みる…。
読み終わって、なんだかほ~っとため息が出ちゃいましたね。

少しずつ少しずつ何かを積み重ねていくような丁寧さで、
大切に書かれているのが、伝わってくるようでした。
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