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微熱のシーズン
岩本 薫
光風社出版 (2002.9)
この本は現在お取り扱いできません。
岩本薫/海老原由里

微熱のシーズンAmazon.co.jp

兄の死以来絵筆を折っていた真田(さなだ)は美術教師として赴任した山村の高校で、名家の跡取りである隆志(たかし)に懐かれる。
しなやかな野生の獣を思わせる隆志は人との距離に脅える真田に対して、時に残酷なほどにまっすぐに内面を暴き、また時に鷹揚な包容力で
安らぎを与える。そんな彼に真田はいつしか囚われて…。
(2002.9)
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鹿尾隆志(かのおたかし・17歳)×真田洋(さなだよう・27歳) 
10歳差、年下攻め。
「夏恋。」
「夏を抱きしめて。」の二編収録されています。

冒頭、太陽に焼かれる山村の砂利道の白い煌きやゆらめく陽炎の中を
汗を流しながら歩いている真田のシーンから始まります。
山や畑しか眼に映るもののない中をハンカチで汗を拭いながら歩く。
ジリジリと照りつける太陽のあの感じが体感できそうです。
「夏恋。」は、全体に渡ってそんな暑い夏の山村のイメージが漂う、
独特の雰囲気があります。
こちらの視点は真田。

過去から逃げるように都会から遠く離れた山村の教師として赴任してきた真田と、その村の山守(やまもり)の一族の長男として山と村に縛り付けられ、排他的で鬱屈した思いの中でもがいている隆志。
ちょっとしたきっかけで隆志が真田につきまとうようになり、やがて愛が芽生えて…というお話です。

あらすじにもありますが、時には荒々しく真っ直ぐに、時には
驚くほどの包容力で真田を包む隆志に、真田が惹かれていくのが無理なく感じられたと思います。17歳には見えませんが(笑)。
真田の兄と、隆志の立場はある意味似たところがあって、
そんな二人を比べながら、兄の死と自分を見つめなおしていく真田。
なかなか深いもんもありますね。

村のおおかたが鹿尾姓を名乗り、隆志の家は「鹿尾一族」の本家で
父は村長より偉い。
自分は一人っ子の長男で、やがて父の跡を継ぐことは逃れられない決定事項とされています。
そういうレールに収まりきれない激しさを感じさせる隆志と、これまた実は日本画家の巨匠を父に持ち、やはり「家」を背負い、それから逃げてきた真田。
家やまわりから押さえつけられるような重圧と、全体に漂う夏の暑さが独特の雰囲気でどっしりと圧し掛かってくるような感じ。
でも暗いわけではなく、それがなんだか良かったですね。
「夏恋。」のラストの、これまた陽射しの照りつける田舎の駅のホームでの別れのシーンはちょっといい。
別れといっても本当の別れではありません。未来を見据えた旅立ちという感じ。

「夏を抱きしめて。」は場所を東京に移して、再び絵を描き始めた真田と、
大学進学を理由に東京に出てきた隆志とのお話です。
そしてこちらの視点は、隆志です。

二編の間には執筆に4年の間があるそうで、
作者様は「雰囲気が微妙に変わってしまった」と書かれていますが、
確かに同じ夏のお話ですが、「夏恋。」の独特の雰囲気はなくなってしまったように感じました。残念。

個展を目差して絵に没頭する真田と、ほおっておかれてグルグル悩んでしまう隆志のお話です。
年下ゆえの不安や悩み、こちらの話の方が年下攻めっぽかったかな。
家のことや将来のことは、まだ何もわからない状態の隆志なので、
二人の間もこの本だけでは、めでたしめでたしというわけにはいってません。

ここで終わり?と思わないでもないラストですが、
とりあえず二人はしっかり愛し合ってるし、
前向きな終わりかたで未来に希望の余韻を残した…というところですかね。
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