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君のその手を離さない
イラスト/高久尚子(講談社X文庫)

田舎の研究所に左遷され、独身寮に住むことになった清家珠希(せいけたまき)は、そこで出会った年下の青年・野々宮律(りつ)に何かと面倒を見てもらっていた。人懐こい律を疎ましく思いながら、珠希の中で彼の存在は大きくなっていく。
しかし自らのプライドの高さゆえ、律を傷つけてしまい…。(2004.11月)
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「いつか、君の手を」
「君のその手を離さない」の二編収録。

律(25歳)×珠希(27歳)年下攻めです。

珠希は勤めていた大手電気機器メーカーで起きたある事件のせいで、「陸の孤島」と言われる場所にある子会社へ出向を命じられ、そこで野々宮律と出会います。

珠希は顔は綺麗ですが愛想はなく、話し方も突き放すようで、人嫌い。どうでもいいような職場に「左遷」された現状に不満を抱えています。自分に顔以外他人より秀でた部分がないことを自覚してはいるのですが、プライドが高いため、鬱屈としていてコンプレックスの塊のようになっています。異動して独身寮に住むことになるのですが、周りから一線を引きたい、踏み込まれたくないという思いがありありで、かなり屈折した男です。
対する律は、ハンサムで明るく人懐こくて天真爛漫、まるで子供のように純粋で、誰にでも好かれる人気者。珠希にも、初めて会ったときから臆することなく、遠慮なしに懐いてしまいます。珠希は迷惑で仕方が無い…。

まるで光と影です。
こんな両極端な二人がどうやって近づいていくのか興味を持って読んでいたのですが、なかなか一筋縄ではいきませんでした。

珠希は、鬱陶しくてたまらない律にペースを乱されながらも、だんだんとそれに慣れ、やがて一緒にいることが楽しいとまで思い、不在の時には寂しいと感じるまでになるのですが、それを珠希が自覚したとたん、ある事実にプライドを傷つけられて、律の気持ちを拒否してしまいます。

とにかく珠希の「プライド」がネックで、疑心暗鬼、嫉妬、苛立ち、羨望、僻み、そんな負の感情の塊のような珠希視点のお話は、ちょっとキツかったです。
鬱陶しい、自分の領域に踏み込むなと言いながら、律が何も話してくれないと言って拗ね、律が何もかも持っていると言って妬む。
自分のそういう勝手で嫌な部分をわかっているのに、コンプレックスはどうにも拭えず、ちょっと被害妄想的な珠希は、決して魅力的なキャラとは思えません。

ところが、そんな珠希がやっと「律を好きだ」と自覚した場面から以降、どういうわけか、この珠希のプライドが決して彼の欠点には思えなくなっていきました。それまで負の感情しか生み出さなかった無駄なプライドが、いつのまにか前へ進む原動力のようになっているんです。
珠希が律への想いを自覚した瞬間から、私の珠希へのイメージが変わってしまいました。

前へ進むといっても「三歩進んで二歩下がる」というくらいにまだ珠希は揺れるのですが、もう珠希への悪いイメージはなく、のめり込んで読んじゃいました。
実は律も、ただの明るく天真爛漫な年下の可愛い青年ではありません。
なんだかいろいろ虚を突かれちゃった感じです。
ずっと鼻について仕方が無かった珠希の「プライド」や「劣等感」は、二人の気持ちが通じ合う場面でもポイントになっておりました。
つまり、テーマがそれなんだ…と感想書きながら今更ながら目から鱗が。
深い。

表題作「君のその手を離さない」は、同居を始めた二人のお話。
律視点です。
律も珠希と同じように、悩んだり不安になったり嫉妬したりしてるんだな~とわかります。
「いつか、君の手を」ではどちらかと言えば珠希が律を追いかけている感じだったのですが、こちらはその反対です。
珠希の尻に敷かれる律。
珠希、ふっきれちゃったんだね。
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