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きみの背中を見ている
椎崎 夕著 / あさと えいりイラスト
大洋図書
SHYノベルズ(2007.3)


ずっと好きだった親友の結婚式の日、嶋津一哉は、酔った勢いで見知らぬ男と一夜をともにしてしまう。夢だと思いたい。けれど肌に残る痕がなによりの証拠だった――。
数か月後、一哉はある事情から親友の弟・西藤成章と同居することになる。成章は一哉がどんなに素っ気ない態度を見せても懐いてきて一哉のペースを乱す。そんな成章にいつしか一哉も心を許すようになっていった。
だが、ある日、成章の背中に見覚えのある傷痕を見つけてしまい!?
西藤成章(さいとうなるあき・21歳)×嶋津一哉(しまづかずや・26歳)
看護学生×製薬会社研究員
「きみの背中を見ている」
「ずっと一緒に」の二編。
これも年下攻めです。何だか続いちゃって、お好きでないかたごめんなさい。いや、私が悪いわけでもないと思うけども(笑)。

ずっと好きだった親友・西藤芳晴(さいとうよしはる)の結婚式の夜、一哉はバーで声をかけてきた若い男を酔った勢いで誘い、寝てしまいます。
読み終わってみると一哉の性格上、この出会いは有り得ない…とちょっと思いました。酔ってもそんな自棄になるようなタイプには見えない…。それだけショックが大きかったということかもしれませんが、それでも乱れるタイプには見えない。
それはともかく酔いが冷めて自分のしたことに愕然とした一哉は、相手がシャワーを浴びている間にホテルから逃げ、頭の中からその日の出来事は消去・・・したつもりでした。

後日、芳晴と会った一哉は、芳晴の義弟・成章の住んでいたアパートが取り壊されることになり困っているという話を聞き、自分のマンションに成章を同居させることにします。
成章を自分の元に住まわせておけば、芳晴との繋がりを保てる…と考えてのことでした。

成章と芳晴は両親の再婚によって兄弟になったのですが、家族も兄弟もとても上手くいっています。ただ、成章が大学を中退して看護学校に入学してしまった時にひと悶着あったため、成章は自分のワガママを通すかわりに、親や兄に迷惑はかけないと援助は一切断り、学費も生活費も全て働きながら自分だけで賄っている苦学生なんですね。
茶髪にピアスという今時の外見のイメージとは違い、成章はとても素直で明るい青年でした。
一方の一哉は、真面目で頑固で融通が利かないという(おそらく)元々の性格の上に、両親を亡くした際、伯母や従兄が遺産めあてで家に乗り込んできて辛い思いをしたため、人間不信に陥っています。辛い時期を支えてくれた芳晴と、父の妹(叔母)以外、社内でも新しく知り合う人間にも、距離を置いています。

しかし、新しい住居が見つかるまでと期限付きでスタートした同居生活は、一哉の人嫌いにも関わらず意外にスムーズになじんでいきます。一哉が出した同居のルールを成章はきちんと守るだけでなく、でしゃばり過ぎない気遣いや優しさも見せる。素直で明るく懐いてくる成章との生活に、一哉も気づかぬうちに安らぎを感じるようになっていきます。

ところが、ある日、一哉は成章に、あの芳晴の結婚式の夜ホテルで一緒だった若い男と同じ特徴を見つけてしまいます。一哉は極度の近眼で、あの日はコンタクトを落としていたため男の容貌ははっきりとは覚えていませんでしたが、抱き合った時指先で辿ったその特徴には気づいていました。成章があの夜の相手に違いないと確信する一哉ですが、成章は同居してからそんな素振りを見せたことは一度もありません。
一哉もまたあの日の夜は成り行きで髪を染めていたため、成章は気づいていないのでは?と思う一哉ですが、しかし酔った成章が洩らした言葉で、成章もまたそれに気づいていることを知ります。
しかし翌朝には成章は自分が言ったことは覚えておらず、態度は全く変わりません。

成章の本心がわからず頑なになってしまう一哉ですが、そんな時、再び一哉のお金目当ての従兄が一哉につきまとい始め、弁護士や叔母と相談して従兄を遠ざけていたところに、何も知らない成章が騙されて従兄を部屋にあげてしまいます。
腹を立てた一哉は、出会いの日のことをとうとう成章に問い詰めてしまい、黙って近づいたのは何が目的だと怒鳴りつけてしまいます。
一哉はますます成章を避けるようになり、やがて、成章はマンションを出て行きます。「好きなんです」という言葉を残して。


二段組で字が小さい上に、一哉の生真面目で頑固で融通が利かず余裕のない思考にどっぷりと浸かるのが結構疲れたため、読むのに時間がかかってしまいました。
余裕がないと言っても、一哉の考え方は至極真っ当で常識的だと思いますが、あまりに不器用なので歯がゆさもすごくありました。このジリジリ感がたまらないんですが(笑)。
成章には一巻して丁寧語で話し、またそれが年長者が年少者に向かって話す口調で最後まで崩れないんですが、この抑制された感じが一哉の性格を現すとともに、なんかちょっと良かったです。

成章は、素直で明るくて裏表がなくて気遣いができて、また自分の責任で将来を切り開こうとするしっかりした面もあって…と、一哉とは正反対の「明」のイメージで、とてもいい子なんですが、やはり“若さ”や“未熟さ”は当たり前だけどあって、成長していく過程なんですね。「ずっと一緒に」では、そのあたりのことがテーマになっているんですが、大人だとはいえ心の傷がまだ癒えずにいる一哉を、成章が支えて癒してくれるといいなと思いますし、そう成長してくれるだろうと感じさせる終わりかたになっていました。

そうそう書き忘れるところでしたが、一哉の伯母と従兄というのが、ホントに非常識なムカつく輩なんですよ。ぶってやりたい(笑)。世の中いろんな人がいるけれど、ここまでの人は見たことないです。一哉もこんなヤツらの方がおかしいと思って早く忘れられればいいのにね。

なかなか読み応えあるお話でした。
じっくりと読むタイプ。
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