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久我 有加 (2003/12)
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桜ビールの営業マン、生粋の関西人の篤也は、社内派閥の関係で東京に飛ばされて以来苛立つ日々を送っていた。東京の流儀に馴染めず、コンビを組む後輩・浩明の標準語も気に入らない。だが、どんなにきつくあたっても、浩明はもの言いたげな眼差しを向けてついてくる。その視線の意味が気になる自分にまた苛立つ―。そんな時、仕事先で同じ関西人の多田と出会い…?
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昔勤め先に20歳くらい年上の大阪の方がいました。私はとても可愛がって戴いたのですが、生の大阪弁は怖い感じがすることがあるようで、一部の人には遠巻きにされていました。年が離れていたわりにはかなり親しく話もさせてもらっていたので、ある時言葉の話になったとき「大阪弁ってちょっと怖いよね~」と言ったところ、その人は「関東弁の方が容赦なく冷たく聞こえることがある」と言っていました。

このお話の篤也(受け)は大阪人です。久我先生は初めて読みましたが、大阪弁多いそうですね。
これはデビュー作。

篤也は大阪の支社から追い払われるような形で東京に飛ばされてきて、それだけでも心の中は納得いかないことだらけなのですが、初めての東京や故郷とは違う流儀や言葉に、理不尽な移動で頑なになっていた心はどうにも馴染めず、辛い日々を送っています。その象徴のように、篤也は聞こえてくる「標準語」にストレスを募らせているのですが、ある時、公園で捨て猫を拾う男の、春のように優しい声を耳にします。それは勿論標準語なのですが、その暖かい声が、凍ってしまった篤也の心にいつまでも残っていて、それがお話のひとつの軸になっています。

篤也が嫌悪する「標準語」に関して、「冷たく聞こえる」と言っていた昔の知人を思い出したもんで冒頭であんな話をしてみました。それがあったので、篤也が「標準語」を忌み嫌うのもちょっとわかるなぁと思って。特に篤也は望んで東京に来たわけではなく怒りをいっぱい抱えていて、そんな時に聞こえてくる耳慣れない言葉は、自分の置かれた理不尽な立場を思い知らせるものだったのではないでしょうか。
だから、同じ大阪人である多田を、懐かしさや安堵感でまるで縋るようにあっさり信じてしまうのも、よくわかります。

さて言葉の話は置いておいて浩明と篤也ですが、この二人は好きです!
浩明は、私の好きな「年下へタレ攻め」。篤也は、これまた私の好きな「オトコマエ受け」。
「春の声」「夏の声」「君の声」と三編収録されていますが、浩明がだんだんとヘタレから大人の男になっていきます。
「春の声」では、親鳥についてまわる雛のように篤也の後ろをくっついてまわっていて、篤也も文中で何度も言うように、ホントに「可愛い」。「夏の声」でも、Hしたいのに嫌われたくなくてそれが言えず、結局は篤也に誘われています。仕事でもプライベートでも心理面でも篤也の方がリードしているんですが、「君の声」ではなんと、ホントに成長してるなぁ~と思わせるようないい男ぶりです。その変化が、読んでてもわかってなぜか嬉しい。

「標準語」を喋る「将来は幹部候補」である浩明のことを、始めはまるで東京の象徴のように毛嫌いしている篤也が、浩明に惹かれていく過程がちょっと弱かったかな、という気はします。「春の声」という下地があっても、「常識ではなく心の声に素直に」なるためには、もう少し何か決定的なものがあってもいいような…。
浩明がなぜ篤也に惹かれたのかは、こちらも弱いですが私は何となくわかりました。
浩明はエリートで幹部候補ゆえに、営業部ではある種の妬み嫉みを持って眺められているようなところがあります。だから、初めて二人が顔を合わせたとき、篤也が、浩明を「春の声」の男だと知って一瞬優しい眼差しで見たのが、浩明はとても嬉しかったんだと思います。
実は就職時に、私も同じ思いをしたことがあるもんで…。別に私が幹部候補だったわけじゃないですよ。ただ私が就職したのは、女性が高卒から大卒が当たり前になる時代の境の頃なんです。大学卒というだけでまだ珍しくありがたがられた時代です。(いったいいくつなんだ?!とは考えないように。)なので上司からは期待を持ってみられましたが、先輩女子社員からは大変いじめられました(笑)。その時に優しくしてくれた人たちには本当に助けられ、懐きまくってました。心の支えと言ってもいいくらい。
だから浩明が篤也に惹かれるのもわかるんですよ~。でも浩明は篤也に優しくされたのはその最初だけですけどね(笑)それなのに懐いていくくらい、浩明も篤也と同じように、居心地の悪さを感じていたんだと思います。

お話も雰囲気も、とても私好みでした。
篤也がとてもはっきりしていて、当て馬多田へもきっぱり拒否しているし、浩明と気まずくなった時も、グズグズ悩んでドツボに嵌るというありがちな展開ではなく、ちゃんと言葉にして伝え解決しています。そんな篤也は、ホントにオトコマエです。読んでる方は浩明と篤也のラブラブっぷりにただ安心して浸ればいい(笑)。恥ずかしいほど熱々なので。
また読み返したい、好きなお話になりました。
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