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言ノ葉ノ花言ノ葉ノ花
砂原糖子著/三池ろむこイラスト
新書館
ディアプラス文庫(2007.9)

三年前から突然人の心の声が聞こえ始め、以来人間不信気味の余村。ある日彼は、自分に好意を持っているらしい同僚の長谷部の心の声を聞いてしまう。
罪悪感を覚えつつも、言葉で、“声”で、一途に注がれる愛情が心地よく、余村も長谷部を好ましく思うようになる。
そしてついに長谷部の告白を受け入れるが、余村が心の声を聞けると知った長谷部の反応は意外なものだった……。
長谷部修一(はせべしゅういち・25歳)×余村和明(よむらかずあき・29歳)

「言ノ葉ノ花」
「言ノ葉ノ星」の二編。

人が心で思っていることが、“声”として聴こえてしまうという、変わった設定です。
砂原さんらしいなぁと思うけど、これを受け入れられるかどうかで感じ方は変わってくると思います。
砂原さんらしい繊細な心理描写は健在で、切なく、途中涙が出そうに。

ある日突然、他人の心の声が聞こえるようになってしまった余村(受)。結婚まで考えていた彼女の醜い本音を聞いてしまい、順風満帆だった生活にも支障をきたし、会社も辞め引きこもりのような生活に陥ってしまいます。

その後、電気量販店で契約社員として働きはじめた余村は、人の心がわかることを生かして販売にも実績を上げ何とか生活していましたが、そんな時、同僚の年下の社員・長谷部が自分を想っていることを、その心の声を聴いて知ってしまいます。
長谷部は仏頂面標準装備の無口な口ベタの男で、外見からは怒っているようにしか見えません。しかし、余村のちょっとした行動や言葉に喜んでいる長谷部の心の声を聴くのは心地良く、裏表のない長谷部に、余村も次第に惹かれていきます。

そして、とうとう長谷部の想いを余村は受け入れることになりますが、ある事件がきっかけで、余村の秘密が長谷部に知られることになります。
長谷部の反応は・・・。
長谷部は本当に誠実で真面目で真摯で一途な男なんですが、それでもそりゃー困惑します。
余村が好きだからこそ、心の全て、マイナスの感情までもが知られてしまうことが怖いのです。怖いから、避けてしまう。
避けられた余村も切ない。
このあたりの件から二人が元に戻るまで、ホントに涙が出そうでした。

相手の心の声が聴こえるということは、Hの時も聴こえてしまうわけで・・・。
頭の中ではしっかり言葉攻めな長谷部が素敵です(笑) 
でもこの状況って相当恥ずかしいだろうなぁ。
「うわっ」とか「すげっ」とか言われたら(長谷部は言ってません)、身の置き所がないんじゃないでしょうか(笑)

「言ノ葉ノ星」では、余村はまた突然に、今度は“声”が聴こえなくなってしまいます。
人の心の裏の醜さを聞くことがなくなって、喜ぶ余村。
しかし、人の本音が全くわからなくなって初めて、今までその能力で助けられていたことがさんざんあったことに気づくのです。
仕事で失敗したことで猜疑心に見舞われ、長谷部の心までわからなくなってしまい、不安に苛まれる余村。
長谷部は余村を支えようとしますが、余村は一人グルグル。

普通は誰もが人の心なんて正確にわからないわけで、わからなくても日々のふれあいとか言葉とか表情とかしぐさで相手を理解しようとするわけだけれど、余村は勝手に声が聴こえていたため、そういう普通の努力を忘れてしまっていたんですね。
人の心の声なんか聴こえない長谷部だって同じように不安もあるわけです。
そういうことを思い出させてくれる長谷部。

お互い理解しあえるように思いは言葉にして伝えようというのと同時に、努力すること、そして信じることが大切だと教えてくれるお話でした。
人の表と裏が違うのはもう致し方ないこと。
でもそれに怯えて疑ってばかりいるのは決していいこととは言えないですよね。
もちろん詐欺なんかに引っかかっては困るので闇雲に人の言うことを信じてもいけないわけですが(笑)。
伝えること、理解しようと務めること、そして大切な人のことを信じることがホントに大事なんだなぁと、現実離れしたお話なのに、なんだかいろいろ考えさせられるところがありました。
三池さんの優しいイラストも良くて、面白いお話でした。
コメント
この記事へのコメント
こんにちは~みむさん!

これ、さっき届きました~(笑)
でも、未読本の山があるので・・いったいいつ読めるかな?
でも、何だか、切なくて、いろいろ考えさせられるお話のようですね。
今日は授業がないので・・早く帰って来て本が読めると良いな~!
2007/09/13(木) 11:08 | URL | 水月 #/fVvPWuA[ 編集]
>水月さん、こんにちは~。

9月の前半分が届いたんですね(笑)
設定が変わってるんですけど、水月さんはこういうの大丈夫でした?
設定はトんでても、いろいろ大事なことに気づかされるようないいお話だったと思います。
こういうのを題材にしちゃうのが砂原さんらしいなぁと思いますが(笑)、丁寧な心理描写時は健在でした。

今日は時間がありそうですか?
体の方が大事ですが・・・本を読んでリラックスできるといいですね。
2007/09/13(木) 15:35 | URL | mimu #-[ 編集]
こんにちは、mimuさん。

評判のいいお話なのに、やっと今頃読みました。

人の心を読む能力があってもなくても苦しむ余村。どちらに転んでも心の平和は訪れない。寓話を読んでるようでした。

要は自分が相手をどれだけ理解する努力をしているかですね、きっと。

ちなみに、私は人の心は読めないほうが幸せな気がします。
2008/06/15(日) 18:29 | URL | 桃 #-[ 編集]
>桃さん
こんにちは、桃さん。

設定は変わっていましたが、伝わってくるものは決して突飛じゃなくて、改めて考えさせられるお話でしたよね。
たとえ心は見えなくても「信じる」ということは大切なことなんだと思います。

人の気持ちがわかってしまうというのはキツイですよね~ぇ。
私も知りたくないです。
そして自分の考えてることは人にも知られたくないですね。そりゃもう絶対!(笑)

TBありがとうございます~vv
2008/06/16(月) 11:43 | URL | mimu #-[ 編集]
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