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4537141050海に眠る
葛城ちか著 / えすとえむイラスト
日本文芸社
KAREN文庫 Mシリーズ2007-10

by G-Tools

公衆トイレの片隅に、へその緒をつけたままで捨てられていたリュウは、虐待に耐えかねて孤児院の牧師を虐殺し、逃亡する。親の愛を知らず、あまりにも孤独で、十六年のリュウの人生は暗闇も同然であった。
しかし、逃亡中に出逢った一人の青年が、リュウの運命に光を与える――(表題作)
KAREN文庫Mシリーズは初買いですが、「復刻版」を主に出していくレーベルらしいです。
この本には三編、表題作「海に眠る」と、「思い出させてあげよう」「さよならは言わない」が収録されていて、どれも雑誌「小説イマージュクラブ」掲載だそうです。今ないですよね、この雑誌。
「JUNE」的な感じなのかな。
最初、表紙にすごく惹かれて手に取ったんですが、中を見て表題作が「死にネタ」と知り、慌てて戻しました(笑)。
それでも数日間、本屋で見かけるたびに表紙が私を呼んでいて・・・・。他所様の感想でいけそうな気がしたので、えいやっと買ってみました。
で、結果はと言うと、『買って正解』でした。

「海に眠る」は、とても悲しい話なんですが、淡々と静かな文体と進行が非常に印象的で心に染み入りました。
へその緒がついたまま捨てられ孤児院で育った渋谷隆(しぶやりゅう・16歳)。姓は渋谷に捨てられたからで、名は孤児院の創立者の名の一文字を取ってつけられました。リュウは、成長すると孤児院の調理師と牧師から性的虐待を受けるようになります。
16になり孤児院を出ることになった時、リュウは牧師と調理師を虐殺し、逃亡します。生まれてから一度も誰からも愛情や優しい言葉をかけられたこともなく、リュウの世界は暗闇と同じでした。自分を陵辱してきた相手を殺したことに罪の意識のかけらもありません。生きるために盗みを繰り返し、やがてリュウはある海辺の町の一軒の家にたどり着きます。

そこに住んでいたのが、井辻祐介(いつじゆうすけ・26歳)。
祐介はリュウを知っていました。
祐介も孤児であり、孤児院で、10歳年上の祐介は赤ん坊だったリュウの世話をしていたことがあったのです。
しかし祐介はその後すぐ養父に引き取られ孤児院を出たため、リュウは祐介を知りません。しかし誰からも愛されたことがないと思っていたリュウを、赤ん坊の頃、祐介はとても大事にいとおしんでいたと、そして離れたあとも、幸せでいてくれることを願っていたと聞かされます。
やがてリュウは、この祐介に癒され、愛を知っていきます。
祐介も孤児ですから、本当の親の愛は知りません。
祐介は心臓が悪く、孤児院にいたころは製薬会社の被験者をしていました。そんな祐介を引き取り愛してくれたのが現在の養父なのですが、10年ほど前から2人の間には親子以上の関係がありました。
嫌々身体を任せているわけではなく、自分を救ってくれた養父に、祐介は愛情を抱き、関係を納得しています。
祐介と養父の間にリュウが入り込んでの三角関係・・・ということになるんですが、そちらに重点はさほど置かれていなくて、それよりも狂気を抱いたリュウが祐介と出会い、感情が芽生え人を大切に思う気持ちが芽生えてくる、そして祐介も、リュウの闇を理解できるからこそ惹かれていく。またそうなっていく環境でもあるわけです。

2人の間の絆がだんだんと結ばれていく過程が、静かな語り口で語られます。
どんなに悲しく悲惨な状況でも、激昂したり悲嘆したり、声高に訴え盛り上げるようなことはなく、終始、リュウの一人称により淡々と静かに進行します。
2人が惹かれあっていく過程が、とてもわかりやすく自然に、素直にこちらに伝わってきて、どんどんお話に入り込んでしまいます。特にリュウが祐介に執着していく過程は、とてもよく理解できる。
海辺の一軒家と歩いていける砂浜という狭い範囲で、切なさと同時に、心を通わせあう2人にはほんのりと甘ささえ感じました。

しかし、祐介の心臓は大変悪く、あと大きな発作を一回でも起こしたら・・・・・。
そしてその危惧は現実になります。祐介の亡骸を抱えたリュウは海へ。

この話の結末は多分これしかありえない、とそう思ってしまいました。第三者的には悲しい終わりだけれど、彼らにとってのこれからは安らかで幸せなんだろう。なんだか「美しい」とまで感じてしまうのですね。
とりあえず「リュウ×祐介」の年下攻めですが、もうそんなことどうでもいいや、って気になる(笑)
「感じる」お話でした。

次の「思い出させてあげよう」は、双子の兄弟のお話。しかし、兄は出産と同時に死んでいて“幽霊”です。
兄弟の絆と、それを越えた愛情。
ラストの「さよならは言わない」は、20代のサラリーマンとカウンセラーカップルのお話です。こちらは一見普通の恋人同士の揉め事に見えて、実は『骨癌患者×薬害C型肝炎感染者』という爆弾が控えています。
しかし、こちらは二編ともハッピーエンドと言っていいと思います。亡くなってるお兄さんがハッピーかどうかは迷うところですが(笑)。

どれも皆「死」が関わっているお話ですが、よくあるBLとは一味違う、大変雰囲気のある物語となっていました。挿絵もまた「物語風」でとてもよく合ってたと思います。
読んでみて良かったと思える作品でした。
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