![]() | 帝都万華鏡 桜の頃を過ぎても 鳩 かなこ著 / 今 市子イラスト 講談社 X文庫ホワイトハート2007-12-03 by G-Tools |
舞台は大正に元号が変わった頃の帝都。
給費生として一高に入学した石木琢馬は、桜の下で出会った美しい青年――高市京介に、かつてない感情を抱いていた。
放課後、自作の詩をしたためた雑記帳を忘れてきた琢馬は、慌てて教室に駆け戻る。そこで雑記帳を読んでいたのは、あの京介だった――。
やがて詩人と編集者となる二人の関係を、濃艶かつエロティックな文体でか描いた異色のデビュー作。
給費生として一高に入学した石木琢馬は、桜の下で出会った美しい青年――高市京介に、かつてない感情を抱いていた。
放課後、自作の詩をしたためた雑記帳を忘れてきた琢馬は、慌てて教室に駆け戻る。そこで雑記帳を読んでいたのは、あの京介だった――。
やがて詩人と編集者となる二人の関係を、濃艶かつエロティックな文体でか描いた異色のデビュー作。
高市京介(たかいちきょうすけ)×石木琢馬(いしきたくま)
編集者×詩人
同い年の一高同級生。
鳩かな子さんのデビュー作です。
巻末に、栗本薫さんの解説付という鳴り物入りのデビュー。栗本さん主催のワークショップの生徒さんだったそうです。
舞台は大正の帝都・東京。
着物、袴の人がいるかと思えば、山高帽に三つ揃え、断髪に洋装の女性が闊歩するなど東洋と西洋が混在する独特の文化や生活が息づいていた時代です。
「大正浪漫」しか書かない趣向の作家さんだそうで、確かに大正や昭和初期の文学を読んだような趣と味わいが漂っていました。
装飾過多で古風な空気を醸しだす文体は、BLという括りで言えば独特の世界を作り出すとてもクセのある文章です。
「感性が合えば」と栗本さんが仰られているように、好き嫌い、読みやすい読みにくいと意見は分かれるだろうと思いますが、鳩さんの書く、この『大正浪漫』は、個人的には、私には大変良く合う、それこそやみつきになりそうな空気感でした。
シリーズになるそうなのですが、次も絶対読みます!という感じです。この空気感をもっと感じたい。
お話は、16歳の時、東北の田舎から状況し、一高への入学試験を受けた琢馬が、京介と出会うところから始まります。
その出会いは琢馬に強い印象を残しますが、一高で再会した京介は琢馬のことを少しも覚えていませんでした。
貧困である琢馬の実家に対して、京介は日本橋の裕福な繊維問屋の五男坊。育ちの良さの滲み出た、無表情で冷たい美貌の近寄り難い青年で、同級生の中にいても、孤高の、高貴ささえ感じさせる、他とは混じり得ない存在でした。
田舎の貧乏人の子供である自分とは全く違う京介に、琢馬は羨望を抱きます。しかし「琢馬のことを覚えていない」という京介に、羽虫ほどの存在価値さえも与えない自分を思い、京介への反発や妬みも同時に抱かせていました。
ところが、その関係は、琢馬が詩を綴った雑記帳を京介が読んだことから変わっていきます。
文学が好きで、同級生たちよりもその世界に精通していると自負していた京介は、琢馬が書く詩に感銘を受け、それが二人を近づけるきっかけとなります。
やがて親友となる二人ですが、20歳のとき、琢馬に大学を諦め結婚すると告げられた京介は、その時受けた衝撃に、自分の琢馬への気持ちが、友情ではなく愛情であったと自覚します。
その後、京介は、琢馬を、そして貧しく倹しい琢馬夫婦の生活を、影からずっと“親友”として支えていきます。
そして二人は30歳となりますが、琢馬の妻の死、琢馬の自殺未遂をきっかけに、二人の関係の均衡を崩す出来事が起こり・・・そこからまた二年ほどの年月をかけて、いわゆる、“ハッピーエンド”となるまでが、じっくりゆっくり濃密で静かに語られていきます。
全体としては“静か”なのですが、とても雄弁な静けさという感じでした。情景描写が多いですが、風景や光や影、風や音、匂いや温度などの周りの描写が、ただの舞台説明ではなく、それ自体が主人公の心理を表すものとしてシンクロしてるんですね。蝉の声ひとつ、月明かりひとつ、一風の風ひとつに時間の流れや息詰まるような想いを感じます。
どちらかというと、直接的に主人公の想いを連ねるというよりは、周囲の動きや静寂によって、その空気を描くという感じなのかな、と思います。だから状況描写が濃く、しつこく、量も多くなる。
無駄にも思えますが、別の見方をすると、それによって、見えない奥行きが一行一行にあるような濃さをかもし出しているような気がします。
表面は淡々とさらっとしているようで、実は濃く、ねっとりしてる。
Hシーンも、なんとも淫猥でじっとりしてますよね(笑)
実はこんな感想を読むよりも、栗本薫さんの解説を読む方が、ずっとその雰囲気が伝わります(笑)。もうあますところなく説明してくれちゃってる感じ。
現在と過去が前後する部分ではちょっと時系列がわかりにくかったり、周囲を詳細に描く代わりに、心理面は明確に伝わりにくいという面もあるのですが、初めての本でもありますし、私の好みにはドンピシャとはまっておるので、これが昇華したあかつきにはどう美味しいものができあがるのか、非常に楽しみであります。
今市子さんの画風って、こういう古風な世界にピッタリですよね。素敵でした。
次も期待してます。
編集者×詩人
同い年の一高同級生。
鳩かな子さんのデビュー作です。
巻末に、栗本薫さんの解説付という鳴り物入りのデビュー。栗本さん主催のワークショップの生徒さんだったそうです。
舞台は大正の帝都・東京。
着物、袴の人がいるかと思えば、山高帽に三つ揃え、断髪に洋装の女性が闊歩するなど東洋と西洋が混在する独特の文化や生活が息づいていた時代です。
「大正浪漫」しか書かない趣向の作家さんだそうで、確かに大正や昭和初期の文学を読んだような趣と味わいが漂っていました。
装飾過多で古風な空気を醸しだす文体は、BLという括りで言えば独特の世界を作り出すとてもクセのある文章です。
「感性が合えば」と栗本さんが仰られているように、好き嫌い、読みやすい読みにくいと意見は分かれるだろうと思いますが、鳩さんの書く、この『大正浪漫』は、個人的には、私には大変良く合う、それこそやみつきになりそうな空気感でした。
シリーズになるそうなのですが、次も絶対読みます!という感じです。この空気感をもっと感じたい。
お話は、16歳の時、東北の田舎から状況し、一高への入学試験を受けた琢馬が、京介と出会うところから始まります。
その出会いは琢馬に強い印象を残しますが、一高で再会した京介は琢馬のことを少しも覚えていませんでした。
貧困である琢馬の実家に対して、京介は日本橋の裕福な繊維問屋の五男坊。育ちの良さの滲み出た、無表情で冷たい美貌の近寄り難い青年で、同級生の中にいても、孤高の、高貴ささえ感じさせる、他とは混じり得ない存在でした。
田舎の貧乏人の子供である自分とは全く違う京介に、琢馬は羨望を抱きます。しかし「琢馬のことを覚えていない」という京介に、羽虫ほどの存在価値さえも与えない自分を思い、京介への反発や妬みも同時に抱かせていました。
ところが、その関係は、琢馬が詩を綴った雑記帳を京介が読んだことから変わっていきます。
文学が好きで、同級生たちよりもその世界に精通していると自負していた京介は、琢馬が書く詩に感銘を受け、それが二人を近づけるきっかけとなります。
やがて親友となる二人ですが、20歳のとき、琢馬に大学を諦め結婚すると告げられた京介は、その時受けた衝撃に、自分の琢馬への気持ちが、友情ではなく愛情であったと自覚します。
その後、京介は、琢馬を、そして貧しく倹しい琢馬夫婦の生活を、影からずっと“親友”として支えていきます。
そして二人は30歳となりますが、琢馬の妻の死、琢馬の自殺未遂をきっかけに、二人の関係の均衡を崩す出来事が起こり・・・そこからまた二年ほどの年月をかけて、いわゆる、“ハッピーエンド”となるまでが、じっくりゆっくり濃密で静かに語られていきます。
全体としては“静か”なのですが、とても雄弁な静けさという感じでした。情景描写が多いですが、風景や光や影、風や音、匂いや温度などの周りの描写が、ただの舞台説明ではなく、それ自体が主人公の心理を表すものとしてシンクロしてるんですね。蝉の声ひとつ、月明かりひとつ、一風の風ひとつに時間の流れや息詰まるような想いを感じます。
どちらかというと、直接的に主人公の想いを連ねるというよりは、周囲の動きや静寂によって、その空気を描くという感じなのかな、と思います。だから状況描写が濃く、しつこく、量も多くなる。
無駄にも思えますが、別の見方をすると、それによって、見えない奥行きが一行一行にあるような濃さをかもし出しているような気がします。
表面は淡々とさらっとしているようで、実は濃く、ねっとりしてる。
Hシーンも、なんとも淫猥でじっとりしてますよね(笑)
実はこんな感想を読むよりも、栗本薫さんの解説を読む方が、ずっとその雰囲気が伝わります(笑)。もうあますところなく説明してくれちゃってる感じ。
現在と過去が前後する部分ではちょっと時系列がわかりにくかったり、周囲を詳細に描く代わりに、心理面は明確に伝わりにくいという面もあるのですが、初めての本でもありますし、私の好みにはドンピシャとはまっておるので、これが昇華したあかつきにはどう美味しいものができあがるのか、非常に楽しみであります。
今市子さんの画風って、こういう古風な世界にピッタリですよね。素敵でした。
次も期待してます。
この記事へのコメント
こんばんは~、みむさん!
あ、以前に戻ってますよ~!良かった良かった!(笑)早くしっかり安定して欲しいですよね!
で、新人さんなのですね~!
うん、みむさんの好きな感じの作品ですね~。お話の内容もなかなかいい感じですね。問題は、それが私の好みに合うかどうか?(笑)でも、先が楽しみな作家さんですね!
あ、以前に戻ってますよ~!良かった良かった!(笑)早くしっかり安定して欲しいですよね!
で、新人さんなのですね~!
うん、みむさんの好きな感じの作品ですね~。お話の内容もなかなかいい感じですね。問題は、それが私の好みに合うかどうか?(笑)でも、先が楽しみな作家さんですね!
2007/12/18(火) 03:45 | URL | 水月 #/fVvPWuA[ 編集]
こんにちは~!
戻りました?
ちょっと見ない間、自分のブログがヘンなことになってたって、結構焦りますね(笑)
管理画面の移行もなんですけど、メンテナンスするたびに不具合が出るってどういうことなんでしょ?
ご迷惑かけてすみませんでした。
またなんかヘンなことあるかもしれないですけど・・・・。
で、そうそう新人さんです。
これはリアル本屋さんで買ったんですけど、今市子さんの表紙に“大正”で即買いですよ(笑)
ご存知のように大好きなもので。
水月さんは清○寺は大丈夫で、大正好きの私がアレは駄目ってのも面白いですね(笑)
そんなに待たずにスピンオフが出るみたいなので、凄く楽しみです!
戻りました?
ちょっと見ない間、自分のブログがヘンなことになってたって、結構焦りますね(笑)
管理画面の移行もなんですけど、メンテナンスするたびに不具合が出るってどういうことなんでしょ?
ご迷惑かけてすみませんでした。
またなんかヘンなことあるかもしれないですけど・・・・。
で、そうそう新人さんです。
これはリアル本屋さんで買ったんですけど、今市子さんの表紙に“大正”で即買いですよ(笑)
ご存知のように大好きなもので。
水月さんは清○寺は大丈夫で、大正好きの私がアレは駄目ってのも面白いですね(笑)
そんなに待たずにスピンオフが出るみたいなので、凄く楽しみです!
2007/12/18(火) 06:18 | URL | mimu #-[ 編集]
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