フレンチレストラン『黒猫亭』のシェフ・鷹嶋織部は、オーナーでギャルソンの黒猫(花崗朋雪)に想いを寄せるが、彼はパトロンの恋人・長澤と同居中。
かつてフランス修行中、腕を見込まれた鷹嶋は寝る暇もないほど黒猫に料理を作らされ、鬱状態に陥った過去から気弱になり、その切ない胸のうちを伝えられずにいる。黒猫は長澤に絶対の信頼を置きながらも、そんな鷹嶋に罪悪感を抱き続けていた。
折から、黒猫亭では新従業員の一人である泉宮が長澤の友人に強姦されかける事件が起こり、翌日黒猫が突然店を休む。
一抹の不安を覚えた鷹嶋が、後日長澤に呼び出されホテルの部屋へ向かうと、なぜかそこには黒猫の姿が…。
かつてフランス修行中、腕を見込まれた鷹嶋は寝る暇もないほど黒猫に料理を作らされ、鬱状態に陥った過去から気弱になり、その切ない胸のうちを伝えられずにいる。黒猫は長澤に絶対の信頼を置きながらも、そんな鷹嶋に罪悪感を抱き続けていた。
折から、黒猫亭では新従業員の一人である泉宮が長澤の友人に強姦されかける事件が起こり、翌日黒猫が突然店を休む。
一抹の不安を覚えた鷹嶋が、後日長澤に呼び出されホテルの部屋へ向かうと、なぜかそこには黒猫の姿が…。
鷹嶋織部(たかしまおりべ・28歳)×花崗朋雪(みかげともゆき・27歳)
シェフ×オーナ兼ギャルソン
「長靴をはいた黒猫」雑誌掲載
「船旅~長靴をはいた黒猫Ⅱ~」雑誌掲載
「居場所」書き下ろしの三編。
佐藤ラカンさんは古本屋で「逃亡」を立ち読みした以外拝見したことがありません。ずいぶん昔のことなので覚えていないんですが、独特の雰囲気はその頃からのものでしたでしょうか。
うまく言えないんですけど、表現の難解な翻訳小説を読んでる時と同じ気持ちになりました。それが心地良くてたまらないんですけどね。
表題作のみ雑誌で読んでいましたので、続きを楽しみに読みました。
お話は攻めの鷹嶋の一人称で語られます。
鷹嶋はフレンチレストラン黒猫亭のたった一人のシェフ。オーナでありギャルソンでもある花崗と二人で店を切り盛りしています。
フランスでの修行時代、鷹嶋は、花崗に料理の腕を見込まれ、彼の言うとおりの料理を作らされ続けました。花崗はあまりに厳しく鷹嶋はそのせいで鬱状態になってしまったほど。
100%そのせいなのか、いくらかは元の性格なのかわかりませんが、鷹嶋はとにかくヘタレで口下手で気弱。ただ料理を作ることだけが花崗のそばにいる自分の価値のように思っていますが、その料理にさえ自信がもてません。
花崗に密かに恋心を抱いていますが、花崗には長澤というパトロンがいるせいもあり、ただ花崗のいうとおりの料理を作り続け傍にいることしかできません。嫉妬で胸を痛めながらも、そんなそぶりは一言だって口に出せないでいます。しかしどんなに胸が痛んでも、花崗とふたりだけで入られる黒猫亭は、鷹嶋にとってはとても大事なものでした。
ところがある日、花崗は新しい従業員を突然雇ってしまいます。
黒猫亭は、花崗、鷹嶋、シェフ見習いの甲田(こうだ)、ギャルソン見習いの泉宮(いずみや)の4人となります。
この4人が黒猫亭という空間の中で送る日常や恋愛や事件を鷹嶋の目で追っていく感じになります。
ヘタレでダメダメ君な鷹嶋の視点、鷹嶋の見た目が語られることになりますが、鷹嶋の主観と実際は、実はちょっと違っていて面白いです。
鷹嶋は自分に全然自信がなく、とても悲観的ですが、甲田や泉宮の反応、花崗の態度から、実は鷹嶋は『天才シェフ』であり、触れるだけで食材も人もメロメロになってしまうという“エロ指”の持ち主だとわかります。それを知らないのは鷹嶋だけで、それゆえヘタレであるとともにちょっと天然でもあるんですが、とても繊細で拒食症の気もある二枚目・・・なんだかとってもほおっておけないタイプなんですよ。実際本人の気づかないところでなんだか凄くモテている(笑)。
花崗は鷹嶋の自己評価の低さや気弱なところが、修行時代自分がやり過ぎてしまったせいだと罪悪感を感じています。そしてそれだけではなく、花崗も鷹嶋を好きなんだろうと思わせる。
しかし鷹嶋にはそれがわからず、甲田や泉宮や、パトロンの長澤にはわかりすぎるくらいわかっている・・・というのが面白い。
しかし、何故花崗が長澤をパトロンにして同居しているのかはよくわかりません(笑) 長澤はEDで二人に肉体関係はないのですが、長澤は花崗を何かから守っていたのだろうと漠然と感じます。
花崗の詳しい過去が語られないので正確にはわかりませんが、花崗が自分を大事にせず、たとえば強姦されかけた泉宮の代わりに自分が陵辱されても、それを辛いと感じられないということに、不憫さを感じていたのかもしれません。花崗は美貌の青年であるので、良くない輩に目をつけられることもあるでしょうから、自分のそばに置くことで、そういう輩から守ることができると思っていたんでしょう。しかし、それが破られてしまったことから、花崗を鷹嶋に手渡して、好きな人と抱き合うということ、肉体の触れ合いの大切さ、その意味を花崗自身に理解させようとしたのかな。
というのは全部私の推測で、本当のところはわかりません。
視点が鷹嶋なので鷹嶋の気持ちに同調しやすいですが、読んでいるとだんだん鷹嶋とは違うものが同時に見えてきて、その二重性が面白かったです。
それと佐藤さんの持つ文体と雰囲気のシャレた感じが心地いい。一人称がすごくハマってましたね。
書き下ろしの「居場所」だけは視点がシェフ見習いの甲田になります。甲田から見た、花崗、鷹嶋のラブラブぶりも面白いですが、メインは甲田と泉宮のカップル。
いろいろわからないことはたくさんあるので、ハッキリさせてもらうためにも続編があるといいなと思うんですけど、わからないまんまでも、この4人と黒猫亭の雰囲気にもっと浸りたいなと思うので、やはり続編があるといいな。
シェフ×オーナ兼ギャルソン
「長靴をはいた黒猫」雑誌掲載
「船旅~長靴をはいた黒猫Ⅱ~」雑誌掲載
「居場所」書き下ろしの三編。
佐藤ラカンさんは古本屋で「逃亡」を立ち読みした以外拝見したことがありません。ずいぶん昔のことなので覚えていないんですが、独特の雰囲気はその頃からのものでしたでしょうか。
うまく言えないんですけど、表現の難解な翻訳小説を読んでる時と同じ気持ちになりました。それが心地良くてたまらないんですけどね。
表題作のみ雑誌で読んでいましたので、続きを楽しみに読みました。
お話は攻めの鷹嶋の一人称で語られます。
鷹嶋はフレンチレストラン黒猫亭のたった一人のシェフ。オーナでありギャルソンでもある花崗と二人で店を切り盛りしています。
フランスでの修行時代、鷹嶋は、花崗に料理の腕を見込まれ、彼の言うとおりの料理を作らされ続けました。花崗はあまりに厳しく鷹嶋はそのせいで鬱状態になってしまったほど。
100%そのせいなのか、いくらかは元の性格なのかわかりませんが、鷹嶋はとにかくヘタレで口下手で気弱。ただ料理を作ることだけが花崗のそばにいる自分の価値のように思っていますが、その料理にさえ自信がもてません。
花崗に密かに恋心を抱いていますが、花崗には長澤というパトロンがいるせいもあり、ただ花崗のいうとおりの料理を作り続け傍にいることしかできません。嫉妬で胸を痛めながらも、そんなそぶりは一言だって口に出せないでいます。しかしどんなに胸が痛んでも、花崗とふたりだけで入られる黒猫亭は、鷹嶋にとってはとても大事なものでした。
ところがある日、花崗は新しい従業員を突然雇ってしまいます。
黒猫亭は、花崗、鷹嶋、シェフ見習いの甲田(こうだ)、ギャルソン見習いの泉宮(いずみや)の4人となります。
この4人が黒猫亭という空間の中で送る日常や恋愛や事件を鷹嶋の目で追っていく感じになります。
ヘタレでダメダメ君な鷹嶋の視点、鷹嶋の見た目が語られることになりますが、鷹嶋の主観と実際は、実はちょっと違っていて面白いです。
鷹嶋は自分に全然自信がなく、とても悲観的ですが、甲田や泉宮の反応、花崗の態度から、実は鷹嶋は『天才シェフ』であり、触れるだけで食材も人もメロメロになってしまうという“エロ指”の持ち主だとわかります。それを知らないのは鷹嶋だけで、それゆえヘタレであるとともにちょっと天然でもあるんですが、とても繊細で拒食症の気もある二枚目・・・なんだかとってもほおっておけないタイプなんですよ。実際本人の気づかないところでなんだか凄くモテている(笑)。
花崗は鷹嶋の自己評価の低さや気弱なところが、修行時代自分がやり過ぎてしまったせいだと罪悪感を感じています。そしてそれだけではなく、花崗も鷹嶋を好きなんだろうと思わせる。
しかし鷹嶋にはそれがわからず、甲田や泉宮や、パトロンの長澤にはわかりすぎるくらいわかっている・・・というのが面白い。
しかし、何故花崗が長澤をパトロンにして同居しているのかはよくわかりません(笑) 長澤はEDで二人に肉体関係はないのですが、長澤は花崗を何かから守っていたのだろうと漠然と感じます。
花崗の詳しい過去が語られないので正確にはわかりませんが、花崗が自分を大事にせず、たとえば強姦されかけた泉宮の代わりに自分が陵辱されても、それを辛いと感じられないということに、不憫さを感じていたのかもしれません。花崗は美貌の青年であるので、良くない輩に目をつけられることもあるでしょうから、自分のそばに置くことで、そういう輩から守ることができると思っていたんでしょう。しかし、それが破られてしまったことから、花崗を鷹嶋に手渡して、好きな人と抱き合うということ、肉体の触れ合いの大切さ、その意味を花崗自身に理解させようとしたのかな。
というのは全部私の推測で、本当のところはわかりません。
視点が鷹嶋なので鷹嶋の気持ちに同調しやすいですが、読んでいるとだんだん鷹嶋とは違うものが同時に見えてきて、その二重性が面白かったです。
それと佐藤さんの持つ文体と雰囲気のシャレた感じが心地いい。一人称がすごくハマってましたね。
書き下ろしの「居場所」だけは視点がシェフ見習いの甲田になります。甲田から見た、花崗、鷹嶋のラブラブぶりも面白いですが、メインは甲田と泉宮のカップル。
いろいろわからないことはたくさんあるので、ハッキリさせてもらうためにも続編があるといいなと思うんですけど、わからないまんまでも、この4人と黒猫亭の雰囲気にもっと浸りたいなと思うので、やはり続編があるといいな。
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