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さらってよさらってよ
渡海奈穂 / 麻々原絵里依
新書館
ディアプラス文庫(2008.3)

初めて好きになった先輩・平尾を相手に、ずるずると都合のいい恋人を演じていた三木。平気なふりをしながらも平尾の身勝手さにひっそりと傷ついている三木の心の慰めになっているのが、仕事先で知り合った年上で穏やかな有元だ。
初めに自棄で有元に関係を迫って失敗して以来、有元は困った顔をしつつも三木を拒まない。
そんな付き合いが心地良かったのに、突然有元に抱きしめられ……?
有元拓馬(ありもとたくま・43歳)×三木育巳(みきいくみ・25歳)
地方公務員×イベント会社社員

「さらってよ」
「大人の事情」の二編。

地味で冴えない中年男と、ダメンズに嵌まったまま抜け出せない本人もダメな青年の恋のお話。
「地味で冴えない」と言ったって、麻々原さんのイラストは美しいので全然冴えなくは見えません(笑)

高校時代の先輩と10年に渡って“恋人”関係を続けている三木。
しかしこの恋人・平尾(ひらお)は、初めて寝た翌日、女の子とキスをしている現場を見つかっても悪びれない不実な男だった。
その場を強がりで流してしまった三木は、それ以来平然と隠さずに繰り返される平尾の浮気にも、気にしていないフリを装い続けるしかなくなってしまう。
そんな中、イベントで知り合った地味だけれど落ち着いて穏やかな有元は、三木の安らぎとなっている。


保守的で、若々しさとか面白みとか遊び心とかそういうものは持ち合わせない、口も上手くない、生真面目な中年攻めですが、不実な恋人に我慢に我慢を重ねながらも引き摺られてしまう寂しがりやの受けが、安寧のようなものを感じてしまうのは何となくわかる。
一見すると、この攻めは臆病でズルいようにも見えますが、人生40年も生きてれば、そりゃ勢いだけじゃ生きていかれませんて。まして不器用な上に一回失敗してますしね。
そして年が上なだけに、三木の中の弱さも計算も全部見えてしまいますから。
受けの三木は、典型的なダメダメくんです。不実な恋人に10年も引き摺られるなんて有り得ない(笑)。
三木は精神的に大人になりきれていないように感じました。
初めて好きになった男を繋ぎ止めたい、別れが怖いという気持ちは理解できるので好感が持てないということではないんですけどね。でも10年は長すぎる。いくらでも見切る機会はあったはず。
それができなかったことにダメさを感じるし、有元に近づいてワガママ押し付けてる姿は本当に子供。

有元に惹かれつつ、平尾のことも思い切れない三木は、「こっちで傷つくとあっちへ逃げ、あっちで傷つくとこっちへ逃げ」というようなことを繰り返す。
だけど、グラグラグラグラしながら、お話の中で三木は少しずつ大人になっていますよね。
してみると、このダメさもグラグラも、一生懸命もがいて幸せになりたいと願いつつもあっちこっちにぶつかって悩む、青年の成長を見たような気になります。

「大人の事情」で、有元に対して一生懸命気づかったり負担にならないようにする三木は、疲れた中年から見ると、素直で可愛いと思えた(笑)
「実家ではデきない」中年男は、BLには珍しいヘタレさんですね(笑)

三木の元恋人・平尾ですが、この時点では同情も好感も興味も持てなかったです。
あとがきを拝見すると裏設定がありそうで一刀両断はできませんが、どんな事情があろうとも性根叩き直されないと好きになれそうにないです。
三木に対する態度は、許し続けた三木にも責任があると思いますが、一回り以上も年上のよく知りもしない有元に対しての侮蔑的な態度は、常識として許せません(笑)。
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