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4813011713非保護者
椎崎夕 / 北畠あけ乃
大洋図書
SHYノベルズ2008-04-26

by G-Tools

麻倉征、19歳、大学生。彼には8歳年上の同居人がいる。ひとり暮らしをする征に父親が寄越したお目付役・瀬尾篤史だ。幼い頃から傍で自分を見守ってくれていた瀬尾と数年ぶりに一緒に暮らすことになった征だったが、瀬尾に対してどうしても素直な態度を取れない。
かつて征にとって誰よりも大切な存在だった瀬尾。だが、ある時を境にふたりの関係は大きく変わってしまっていたのだ・・・

瀬尾篤史(せおあつし・27歳)×麻倉征(あさくらまさき・19歳)
お目付け役×大学生

「非保護者」
「恋人の距離で」の二編


会社社長の父とピアニストの母の間に生まれた征は、幼い頃ピアノの天才と言われ将来を嘱望されていました。あまり遊び相手のいない征のためにお守り役として征の相手をしていたのがその頃中学生だった瀬尾。
征は瀬尾にとても懐き彼を慕っていましたが、ある日瀬尾が目を離した隙に木に登った征は、木から落ち左手を骨折してピアノが弾けなくなってしまいます。
ピアノが弾けなくなったことで母から見放され傷つく征を、瀬尾は優しく見守り支えとなってくれますが、瀬尾が自分の側にいてくれる理由が、「自分のせいで怪我をさせた」という負い目のせいだと知ってからは、瀬尾に会うことを拒否してきました。
しかし、瀬尾とは没交渉のまま大学生になり一人暮らしを始めた征の素行の悪さを心配した父親がお目付け役として瀬尾を送り込んできて、征と瀬尾は再会、同居することになります。

以前の優しかった瀬尾とは違い、あくまでビジネスライクな態度で敬語を崩さない瀬尾に反発した征は、さらに自堕落な生活を繰り返し、そのたびに瀬尾に連れ戻され叱責されることになります。
ますます反発する征。
しかしその態度とは裏腹に、実は征は瀬尾に恋心を抱いていて。



椎崎さんと言えば「切ない系」かな~と思うのですが、これは微妙に違った感じがしました。
確かに切ないところもあるけれど、どちらかというと、お子様・征の成長物語?
物に動じない無表情風の瀬尾にしても、征を幼い頃からどういう目で見守ってきたかは想像できるので、それを隠して鉄火面に徹してるのかと思うとなんとなくこちらも可愛らしく見えてしまった(笑)。
好きな相手に怪我をさせた、好きな相手に負い目を負わせた・・・って、うえだ真由さんの「Missing You」と状況は似ていますね。

好きだと言えなくて、でも相手が贖罪のためだけに自分の側にいるというのも面白くなくて、わざと悪ぶって反抗している姿は未熟で我がまま過ぎると思うんですが、瀬尾を解放しようと素直になって(これも強がりでもあるんだけど)前向きに変わっていく様子は「いいな」と思いました。選んだ方法がまた思い切ったものでしたけど(笑)、その潔さというか、そういう強がりがむしろ清々しい気がしましたね。

ピアノから陶芸というのは唐突な感じもするけれど、同じ“手からうまれるもの”だし、征の器用に動かなくなった指から最高のものを生み出せる可能性が陶芸にはあるかなと思うんですよね。
ピアノは弾けなくなったけど、その同じ指から可能性が広がる・・・って、すごく意味のあることじゃないかと思う。

そして「成長」という意味で言えば、瀬尾から離れようと思えたことも成長だけど、母の呪縛から離れたことも成長だと思います。
この母の存在が、ある意味瀬尾と征の関係を狂わせる原因の一旦になったとも言えそうです。この母から決別できたこともすごく大きな意味があるんじゃないかな。願わくば、母親自身の成長も望みます(笑)。これはムリか。

恋人同士になった二人はただの甘~いバカップルでした(笑)。
征の叔父さんは、何も知らないのか、それとも何もかも知ってるのか、それが凄く気になります。
コメント
この記事へのコメント
こんばんは!mimuさん。
椎崎さんは、地の文の説明が少ししつこくて、遅々として展開が進まないなあと思うことが多いです。
でも、たまに無性にこの方の何処か凛とした雰囲気の小説を読んでみたくなるんですよね、自分でも不思議です。
要するに、好きは好きなんだと思うのですが。

征がお坊ちゃん育ちで、子供の反抗期っぽい行動が少し行き過ぎる気もするのですが、ちょっとした仕草にあどけない子供時代の彼の雰囲気が蘇ってくるトコロがあって、この辺が椎崎さんの文章の醍醐味なのかもなあ…と思いつつ、私も楽しく読みました。

うえださんの「Missing You」が似た設定だったんですねー。
私は確かこの作品は雑誌で読んだ筈で、あまり面白かった記憶は無いのですが、ストーリーについては完全に忘却の彼方ですヨ(笑)。
来月は、↑の“お兄ちゃん”編が出るらしいので興味あるのですが…。
お兄ちゃんが受けだと良いなあ。

スイマセン、変なトコロに喰いついちゃいました。
またまたTB頂きましたので、コチラもよろしくお願いします。
ではでは。
2008/05/30(金) 22:44 | URL | tatsuki #1AqkR7Yg[ 編集]
>tatsukiさん
こんにちは、tatsukiさん。

私も椎崎さんが物凄く好きというわけではないんですが、新作はつい手に取ってしまいます。
雰囲気とか…やっぱり好きなんだと思います(笑)

征くらいの年齢なら、素直になれない気持ちは理解できます。
私も20代半ばごろまでそうでしたから(笑)。
でも今そういう年齢を振り返ると、素直にならずに得をすることは何もないということがわかるので、つい「わがまま過ぎる」なんて感想を抱いてしまうのですね。

「Missing You」も、子供の頃、攻が目を離した隙に受が怪我をして脚に障害が残ってしまうお話でした。
受の反応は全然違いますけど、「贖罪のために側にいてくれている」と思っているところは同じですね。
“お兄ちゃん編”というと、超ブラコンで受を甘やかしていたあの兄さんですか!?
予想していたけど、それはまた読んでしまいそう(笑)。

いつもTBありがとうございます!
2008/06/01(日) 12:42 | URL | mimu #-[ 編集]
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たまに、無性に椎崎さんの小説が読みたくなります。物凄く面白いストーリー展開が待っている訳でも無く、登場人物達に萌えを期待するでも無...
2008/05/30(金) 22:30:32 | la aqua vita