
高遠琉加 / 北上れん
アスキー・メディアワークス
B-PRINCE文庫2008-5
街中に建つ瀟洒なプチホテル『ホテル・ラヴィアンローズ』。
寡黙で精悍なフロント係の数樹は、毎週金曜の夜に決まって『赤』の部屋に泊りにくるワケありげな美人サラリーマン・浅海のことが忘れられなくて……!?(「ホテルラヴィアンローズ-赤-」)。
レトロで洒落たホテルの夜を妖しく彩るのは、駆け落ち、熱い思い出、そして奪う愛――!!
寡黙で精悍なフロント係の数樹は、毎週金曜の夜に決まって『赤』の部屋に泊りにくるワケありげな美人サラリーマン・浅海のことが忘れられなくて……!?(「ホテルラヴィアンローズ-赤-」)。
レトロで洒落たホテルの夜を妖しく彩るのは、駆け落ち、熱い思い出、そして奪う愛――!!
『ホテル・ラヴィアンローズ』を舞台にした2つの中編と1つの短編からなるオムニバス。
今は廃墟となった『ホテル・ラヴィアンローズ』に関わり、別れや出会い、愛を育んだ3カップルのお話です。
「ホテル・ラヴィアンローズ-青-」「ホテル・ラヴィアンローズ-赤-」「薔薇色の人生」と三編入っていますが、時間的には廃墟となった現在から時間を遡っていく形で掲載されています。
「色」はホテルの部屋の色。ラヴィアンローズは部屋が一つ一つ違うテーマカラーを持っているホテルです。
ひとつめの『-青-』は、高校2年生同士のカップル。
父親から暴力を受けている攻と、攻に片想いをしている受。その片想いを教師に知られ、受は脅されて教師と関係を持たされています。
あるきっかけで言葉を交わすようになった二人は、家や学校を離れた二人だけの時間を過ごし心を通わせます。
しかし、一学期の終業式が終わったその日、攻が人を刺したと告白したのをきっかけに、二人は逃避行に出てしまいます。
最初からずっと続くわけがないとわかっている高校生2人だけの逃走の旅が、青くて切なかったです。
二人でいることが幸せであればあるほど、いつか終わる夏休みのようで、何もできない子供でしかない彼らの想いが胸に痛いですね。
三つのお話の中ではこれが一番好きでした。
棒高跳びの選手である攻が、青い空高く吸い込まれるように飛んでいく姿に想いを重ねる受や、夏休みの青く開けた空など開放感があるはずなのに、やがて夏休みは終わり、飛んだ人はマットに落ちてくるという終わりが必ず待っている。
どうしようもないということがわかっているから、ますます切ないなあと思うんでしょうね。
そのとおり、この逃避行はあっけなく終わりを迎えますが、最後の晩に過ごしたのが「青」の部屋。
数年後、廃墟となったホテルを訪ねた受の目の前に・・・。
ふたつめの『-赤-』は時系列ではもっと前のお話。
ラヴィアンローズのフロントを勤める青年(攻)と、赤の部屋で心中事件を起こしたことのある年上の青年(受)が主人公です。
毎週金曜の夜に赤の部屋に泊る客に興味を覚えた攻。
赤の部屋には実は「幽霊が出る」という噂がありました。その部屋で以前心中事件があり、男は亡くなり女が生き残った。そのため恨みを抱いた男の幽霊がその部屋に現れると。
しかし、確かに心中事件はあったもののそのホテルで亡くなった人は今まで一人もおらず「幽霊」は根も葉もない噂なのですが、ある晩、いつものように赤の部屋に泊った青年が酔って手首を切ってしまいます。
実は青年が心中事件の片割れで、事件では二人とも命は助かったのですが、「幽霊」の噂を聞いて恋人が恨んでいると信じ込み、毎週ホテルにやってきていたのです。
ずっと過去に捕らわれたままでいる受に苛立ちながらも、関わっていく攻。
そして彼に惹かれた攻は、過去の呪縛を解くために、ある行動にでます。
最後の『薔薇色の人生』はもっと遡って終戦後。
華族のお屋敷が「ラヴィアンローズ」となる経緯が語られています。
敗戦後、華族制度廃止により全てを失くした華族の息子(受)と、工務店の息子(攻)の二人は新制中学生。
受の住んでいた屋敷は、占領軍に接収されてしまい、現在は伯父の家に世話になっています。
希望を失う受に、攻は、いつかあの家を取り戻そうと約束しますが、家の事情で二人は離れ離れになります。
数年後再会を果たし二人は恋人同士となるものの、高度成長期に乗って大成長を遂げた会社の役員となった攻は仕事に忙しく、またお見合い話が持ち上がっている。
それを知り、別れを決意した受に攻が見せたものは・・・。
三つともラヴィアンローズを舞台に「喪失」し、そして再び「再生」するというのが共通のテーマなのですね。
『ラヴィアンローズ』は廃墟になったけれど、数々の愛や別れのドラマを生む舞台となった。
カップル同士に関わりは全くないけれど、このホテルから、希望や愛を抱いて人生に向かっていったことは間違いないのです。
やがて朽ちるか取り壊されてしまう運命のホテルだとしても、それらを見守ってきたホテル・・・と思うと、建物にも愛しさを感じてしまいます。
青い空や陽が沈む空の色、夜の回転木馬や屋敷の門から玄関に連なる外灯の灯りなど、色や光がとても印象的で、目に浮かぶ文章でした。
情景だけでなく心理描写も、言葉のリズムが読みやすくて、入りやすくて、気持ちよかったです。
雰囲気のある、素敵なオムニバスでした。
*******************************
長々感想を書いたあとに、こんなところでお知らせですが、ちょっとの間感想をまとめている時間がないので、更新が止まると思います。
忙しいのは1週間から2週間程度だと思いますが、場合によってはもっと早く再開できると思います。
本を読める時間があって、感想をまとめられたらその期間でもUPしていきますので、まあ、お知らせするまでもないかと思ったんですが、もし更新されてなくても、忙しいのね~と思っといて下さい(笑)
今は廃墟となった『ホテル・ラヴィアンローズ』に関わり、別れや出会い、愛を育んだ3カップルのお話です。
「ホテル・ラヴィアンローズ-青-」「ホテル・ラヴィアンローズ-赤-」「薔薇色の人生」と三編入っていますが、時間的には廃墟となった現在から時間を遡っていく形で掲載されています。
「色」はホテルの部屋の色。ラヴィアンローズは部屋が一つ一つ違うテーマカラーを持っているホテルです。
ひとつめの『-青-』は、高校2年生同士のカップル。
父親から暴力を受けている攻と、攻に片想いをしている受。その片想いを教師に知られ、受は脅されて教師と関係を持たされています。
あるきっかけで言葉を交わすようになった二人は、家や学校を離れた二人だけの時間を過ごし心を通わせます。
しかし、一学期の終業式が終わったその日、攻が人を刺したと告白したのをきっかけに、二人は逃避行に出てしまいます。
最初からずっと続くわけがないとわかっている高校生2人だけの逃走の旅が、青くて切なかったです。
二人でいることが幸せであればあるほど、いつか終わる夏休みのようで、何もできない子供でしかない彼らの想いが胸に痛いですね。
三つのお話の中ではこれが一番好きでした。
棒高跳びの選手である攻が、青い空高く吸い込まれるように飛んでいく姿に想いを重ねる受や、夏休みの青く開けた空など開放感があるはずなのに、やがて夏休みは終わり、飛んだ人はマットに落ちてくるという終わりが必ず待っている。
どうしようもないということがわかっているから、ますます切ないなあと思うんでしょうね。
そのとおり、この逃避行はあっけなく終わりを迎えますが、最後の晩に過ごしたのが「青」の部屋。
数年後、廃墟となったホテルを訪ねた受の目の前に・・・。
ふたつめの『-赤-』は時系列ではもっと前のお話。
ラヴィアンローズのフロントを勤める青年(攻)と、赤の部屋で心中事件を起こしたことのある年上の青年(受)が主人公です。
毎週金曜の夜に赤の部屋に泊る客に興味を覚えた攻。
赤の部屋には実は「幽霊が出る」という噂がありました。その部屋で以前心中事件があり、男は亡くなり女が生き残った。そのため恨みを抱いた男の幽霊がその部屋に現れると。
しかし、確かに心中事件はあったもののそのホテルで亡くなった人は今まで一人もおらず「幽霊」は根も葉もない噂なのですが、ある晩、いつものように赤の部屋に泊った青年が酔って手首を切ってしまいます。
実は青年が心中事件の片割れで、事件では二人とも命は助かったのですが、「幽霊」の噂を聞いて恋人が恨んでいると信じ込み、毎週ホテルにやってきていたのです。
ずっと過去に捕らわれたままでいる受に苛立ちながらも、関わっていく攻。
そして彼に惹かれた攻は、過去の呪縛を解くために、ある行動にでます。
最後の『薔薇色の人生』はもっと遡って終戦後。
華族のお屋敷が「ラヴィアンローズ」となる経緯が語られています。
敗戦後、華族制度廃止により全てを失くした華族の息子(受)と、工務店の息子(攻)の二人は新制中学生。
受の住んでいた屋敷は、占領軍に接収されてしまい、現在は伯父の家に世話になっています。
希望を失う受に、攻は、いつかあの家を取り戻そうと約束しますが、家の事情で二人は離れ離れになります。
数年後再会を果たし二人は恋人同士となるものの、高度成長期に乗って大成長を遂げた会社の役員となった攻は仕事に忙しく、またお見合い話が持ち上がっている。
それを知り、別れを決意した受に攻が見せたものは・・・。
三つともラヴィアンローズを舞台に「喪失」し、そして再び「再生」するというのが共通のテーマなのですね。
『ラヴィアンローズ』は廃墟になったけれど、数々の愛や別れのドラマを生む舞台となった。
カップル同士に関わりは全くないけれど、このホテルから、希望や愛を抱いて人生に向かっていったことは間違いないのです。
やがて朽ちるか取り壊されてしまう運命のホテルだとしても、それらを見守ってきたホテル・・・と思うと、建物にも愛しさを感じてしまいます。
青い空や陽が沈む空の色、夜の回転木馬や屋敷の門から玄関に連なる外灯の灯りなど、色や光がとても印象的で、目に浮かぶ文章でした。
情景だけでなく心理描写も、言葉のリズムが読みやすくて、入りやすくて、気持ちよかったです。
雰囲気のある、素敵なオムニバスでした。
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長々感想を書いたあとに、こんなところでお知らせですが、ちょっとの間感想をまとめている時間がないので、更新が止まると思います。
忙しいのは1週間から2週間程度だと思いますが、場合によってはもっと早く再開できると思います。
本を読める時間があって、感想をまとめられたらその期間でもUPしていきますので、まあ、お知らせするまでもないかと思ったんですが、もし更新されてなくても、忙しいのね~と思っといて下さい(笑)
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