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4403521940雪よ林檎の香のごとく
一穂ミチ / 竹美家らら
新書館
ディアプラス文庫 2008-07-10

by G-Tools

中学受験も高校受験も失敗し、父の母校に進学する約束を果たせなかった志緒。今は、来年度編入試験を受けるため、じりじりする気持ちを抱えながら勉強漬けの毎日を過ごしている。
五月雨の降るある日、志緒は早朝の図書室で、いつも飄々としている担任・桂の涙を見てしまった。
あまりに透明な涙は、志緒の心にもさざなみを立て――。

桂英治(かつらえいじ)×結城志緒(ゆうきしお)
国語教師×生徒(高校1~3年生)
おそらく一回りくらいの年齢差。

「雪よ林檎の香のごとく」雑誌掲載
「手のひらにきみの気配が」書き下ろしの二編。


父と同じ高校に通うことを目標としていた志緒は、中学高校と受験に失敗し、現在は編入を目指して勉強に没頭している。
早朝の図書室で勉強することを日課にしていた志緒は、ある日、そこで担任の桂が泣いているところを目撃してしまう。

理由は“小説に感動したから”と桂は言うが、実はそれだけではないわけがあった。
二人はそれから早朝の図書室で毎朝のように言葉を交わし近づいていくが、そんな中、桂の「一生人を好きにならない」という言葉を聞き、いつも飄々とした桂の隠された影を知る。

やがて志緒の幼馴染・りかが桂に恋をし、失恋したことをきっかけに志緒は自分も桂を好きになっていることに気づく。
しかし桂にきっぱりと拒否され、「一生人を好きにならない」と決めた桂の過去を聞かされる――。


なんだかとっても静けさと透明感のある、素敵なお話でしたね。
一穂ミチさんは新人さんですが、これは今後に期待の大きい新人さんという感じがします。
何よりその文章、というか交わされる『会話』の誌的なリズムは非常に特徴的だと思いました。
ポツリポツリと、時にはポンポンと、だけど怒っていても泣いていても静謐な言葉のキャッチボールの妙。
綺麗に整えられた、だけどわざとらしくない優しい言葉。それでいて、そこにはユーモアがあったり、伏線があったり。

どうしようもなく子供で、あるときは確かに桂との間に年齢差を感じるんだけれど、志緒の一部分は確実に桂より大人びていて、子供と大人が危うく絶妙に一人の人間の中の存在している感じは、10代の繊細さを強く感じさせました。
桂の、大人だけれど子供であるところも同様に。

優しくセンシティブで気持ちのいいお話でした。
タイトルも綺麗で(書き下ろしのそれも)、意味が伴うとより壊れそうに美しい。
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