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くるおしく、きみを想う
沙野 風結子著 / 朝南 かつみ〔画〕
雄飛
アイノベルズ(2007.3)


憧れたあの人は自分を憎んでいた――“殺したい”と想うほどに。
13年前、彼に殺されかけた記憶と焦がれる想いを封じ、航希は弁護士としての道を歩みはじめた。そんなとき、航希の元に兄が借金を残し失踪したとの知らせが入る。
しかも、兄を崇拝し弟の航希を憎悪するあの男、莉一が現れ……。
突然の再会に動揺する航希に、莉一は借金を肩代わりする代償に兄の代わりとなるよう要求してきて――。
志筑莉一(しづきりいち・31歳)×世良航希(せらこうき・26歳)
心臓外科医×弁護士。

航希が小学生のとき、隣に志筑家が引っ越してきました。航希より五つ年上の志筑家の一人息子・莉一に、航希は憧れでいっぱいになります。
なんとか近づきたいと幼い知恵を働かせてやっと話ができるようになりますが、莉一の存在を一つ年上の兄・采登(あやと)に話したとたん、航希と違って要領のいい采登は簡単に莉一と仲良くなってしまいます。

どんどん親密になっていく二人に感じる嫉妬や憤り、焦り。
そして追い討ちをかけるように、眠る采登の唇に、莉一がこっそりと口づけているのを、航希は目撃してしまいます。
怒った航希は、見られたことに気づき追ってきた莉一に「さっきみたいなの、采登はキモチワルイって」と、莉一を罰するために嘘をついてしまいます。そして「誰にも言わないから、俺にもして」と。
しかし、この時11歳だった航希は、莉一の激しいキスに怯え、莉一を決定的に怒らせてしまったことに気づきます。

それでも、必死で莉一を慕う航希ですが、莉一の態度は自分を疎ましがるだけでした。ところが、ある日、莉一に二人だけで出かけようと誘われ、航希は有頂天になります。
采登を出し抜いたことに対する喜び。
あいにく約束の日は大型台風がやってきていましたが、航希は約束の場所へ出かけます。
ところが、莉一に連れていかれた場所で航希は崖からつきおとされそうになり、殺されそうになるのです。
「本当に困ってるんだ。君のことを頭から消したい。どうすれば消せると思う、航希?」
莉一は、航希が誰かに話すのではないか不安で、航希の存在が頭から離れない、といいます。莉一が自分を殺してしまいたいほど憎んでいると言う事実に、胸がつぶれそうな悲しみを覚える航希。莉一に崖から落とされそうになり、台風の風で煽られて飛ばされた航希は、崖の下にこそ落ちませんでしたが、地面を転がり、こめかみに大怪我を負います。
血を流し、動けずに横たわり雨に打たれる航希を見捨て、去っていく莉一。

航希は幸い見知らぬ誰かによって病院まで連れてこられ一命を取りとめますが、その翌年、志筑一家は航希の隣から引っ越していき、それからはもう会うことはありませんでした。航希は弁護士になり、幼い頃優秀だった兄の采登は大学を中退してホストになっていました。
そんなある日、采登が店に借金を残したまま行方を晦ませたとの連絡が入ります。そして、訪れた采登のマンションに、偶然莉一がやってきて、二人は14年ぶりに再会します。
そこで、「采登の借金を肩代わりする代わりに、采登の身代わりをしろ」と迫られるのです。

一度は断ったものの、弁護士事務所に身内が借金をしているとバラすと脅され、引き受けることにする航希。
しかし、航希が采登の身代わりとなるのは寝室だけで、それも、子供のときに航希がついた嘘を信じている莉一は、采登に触れるどころか心を打ち明けさえしていなかったので、莉一が心の中で采登にそうしたいと願っていたように、ただ優しく、請うようなキスを、航希は受け止めるだけだったのです。

ところが、莉一が優しいのは航希が采登の代わりとなる寝室だけで、それ以外の場所での莉一は「航希」にとても冷たく接します。そして同居を始めて数日後、バスルームで始まった「航希」への陵辱が、日々繰り返されるようになっていきます。

子供の頃殺されかけた記憶は航希のなかにしっかりと根付いているのに、航希は本当に莉一が好きなんですね。しかし莉一が欲しがるのは采登だけで、優しく囁かれる言葉もキスも、全ては「采登」に向けられたもの。
わかっていながら莉一を想う気持ちはどんどん募っていき、本当に苦しい片思いが切ないです。
二人の間に穏やかで優しい空気が流れ始めたとたん、采登が帰ってきて、それまで航希がいた場所に何の躊躇もなく入り込んでしまい、航希は用なしにされてしまうし。

二人の間で繰り広げられるHシーンは、かなりエロかったです。医療器具を使ってのSMチックなものもあるんですが、そういう即物的(笑)なのより、お互いを押し付けあってその感触に相手の下着の中が濡れるのがわかるとか、○股をして、出す時だけ先を中に入れて射○するとか、最初の頃の二人の絡みが凄く淫靡だなぁと思いました。

莉一は、航希にかなりひどいことをしていますが、不思議と嫌な感じはしません。それは外科医としての優秀で誠実で真摯な態度がきちんと書かれていて、そういうところからも、本質がとてもきちんとした人間なのが伝わってくるからかなと思います。自分の担当する患者を前に憔悴する莉一の姿は、彼の医師として感じている責任や気概まで伝えてきます。心臓を患ったら莉一に診てもらいたいくらい(笑)。ただの鬼畜な壊れた人ではないんですよね。
確かに航希に対する態度は鬼畜っぽいんですが、それだけではない莉一と言う人の本質や心の葛藤が伝わってくる。
そして、ラスト近くで莉一の胸のうちが語られると、それがやはりまちがいではないことがわかってきます。どんなにひどいことをしても、それが莉一の真実の姿ではないんですね。

本当は、こういう話の常として、昔から莉一は航希のことが好きだったのかなと思ったんですよね。でも、昔の莉一の航希への思いは、確かに疎ましい、憎しみというものに近かったんだろうと思います。自分の性癖をどうしても知られたくない、彼なりの真剣な事情があって、航希の存在は怖れるべき存在だった。
そしてそういう航希を排除したいと願う莉一は、結局は航希の存在に囚われていて、一緒に暮らして航希を辱めるようになってからも、やはり航希に囚われたままなんだと思います。航希という存在は莉一の中でとても大きいものだったんだと思います。
軽い言い方だけど、イライライするほど気になる・・・ってあるじゃないですか?憎しみと愛情が表裏一体になっているというのが一番わかりやすい言い方になるでしょうか。
一緒にいるようになって、憎しみが愛情に変わったというのも間違いではないんだけど、それ以前から、憎しみだとか愛情だとか言う前に、心が「捕まっていた」のかなと感じました。
航希の想いは辛いけれど、結局は強く健気で真っ直ぐな航希の莉一への愛情が、莉一の不安や苛立ちや弱さ、行き場のない采登への想いも含めて、幼い頃からずっとその全部を受け止める捌け口となり、莉一を支え癒したんだろうという感じがします。
そんなわけで、ラストの一行、莉一のセリフはいろんな思いが読み取れるセリフだと思うんですけど、タイトルが凄くよく合ってるな~と思わせる、綺麗な締めだと思いました。

莉一も、航希も、本当に「くるおしく、きみを想って」いる、切ない愛情がずっしり詰まった読み応えあるお話でした。
エロも濃厚ですから、お好きなかたはそっちもたっぷり楽しめますよ。 
それでいてそれだけじゃないのがいいです。

朝南さんの描かれるクールな莉一がとても素敵でした。そして最後にあるラフ画がまたいいですね~。これちょっと笑えますね。
クール眼鏡萌えじゃないんですけど、莉一のイラストはホントに素敵。
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