![]() | 工事現場で逢いましょう 池戸裕子 / 有馬かつみ 徳間書店 キャラ文庫 2008-10-23 by G-Tools |
世間知らずの社長令息・橘は、社会勉強のためスーパーのアルバイトをすることに。けれど、初めての仕事は失敗ばかり。そんな橘に「この仕事、向いてないんじゃないか」とキツイひと言を浴びせたのは、近所の工事現場で働く有吉だ。
日に焼けた褐色の肌が逞しい有吉に、密かに憧れていた橘。でも悪気はないけれど率直な物言いに反発心が芽生えて!?
日に焼けた褐色の肌が逞しい有吉に、密かに憧れていた橘。でも悪気はないけれど率直な物言いに反発心が芽生えて!?
有吉龍市(ありよしりゅういち・28歳)×橘旭(たちばなあさひ・23歳)
塗装業・有吉組社長×全国区の中規模スーパー「マル冨フーズ」跡取り
社長令息として何の不自由もなく育った橘は、大学を卒業後も父の会社に就職し、次期社長として、息子に甘い現社長である父が与えてくれた橘のための部署で“主任”の肩書きをもらい仕事を学ぶことに励んでいます。
橘には父が見込んで高校二年生の時に家庭教師としてつけてくれ、一足先に「マル冨フーズ」に就職して社長の信任も厚い高山(たかやま・30歳)が学生時代と同様に教育係としてつき、厳しい指導をしています。
優秀でクールで、いかにもできるエリートサラリーマンという高山に憧れ、橘は彼を目標に日々頑張っている・・・つもりでしたが、如何せん苦労知らずのお坊ちゃま。修業の一貫として他社のスーパーでアルバイトとして働くことになるのですが、そこで、近所のマンションで塗装工事をしている有吉と知り合うことになるわけです。
お坊ちゃんですから、最初はああいうガテンな方々の独特の仕事着や雰囲気に「カッコいいけどちょっと怖い」と憧れつつも“猛獣の群れを隠れて見つめるインパラ”状態だった橘ですが、あるきっかけで言葉を交わすようになり、率直な物言いに腹を立てることがあっても、若くして人の上にたち、部下から慕われる有吉の男らしさや真っ直ぐさに、少しずつ惹かれるようになっていきます。
やがて、実際に働くことで本当の意味での「働く」という意味を学んでいき、また二人の(有吉と高山)タイプの違う言わば「働く先輩たち」を通してなんとなく恵まれた環境に暖かく包まれてすごしてきた橘が社会人としての自覚を芽生えさせていく、成長と恋のお話。
「ガテン」というだけでツボなのでそれだけでも私には美味しいお話。先日の烏城さんのトラック野郎もそうだけど・・・ああ、もっとどっかにガテンはないものか。
しかしキャラとして印象深かったのは、実は有吉ではなく橘の教育係・高山の方です。
高山は橘が高校生の頃から「先生」として令息に相応しい教育を施して橘を育ててきたわけですが、彼にはもちろん橘への特別な感情がありました。
そんな想いはひとかけらも滲ませることなく大切に育ててきた掌中の珠を、後からきた有吉に掻っ攫われてしまうという、高山は可哀相な役回りだったのですが、しかし彼は引き際が非常に綺麗だった。大変株を上げたと思います。
高山は恋には破れても仕事の出来る男として橘の憧れを受けるに足る男でした。そんな彼のお話も読んでみたいな。
池戸さんはあとがきで、有吉と橘、高山と橘の、種類は違えど等しく大切な絆を書きたいと述べておられましたが、ちゃんと伝わってきたと思いましたよ。
塗装業・有吉組社長×全国区の中規模スーパー「マル冨フーズ」跡取り
社長令息として何の不自由もなく育った橘は、大学を卒業後も父の会社に就職し、次期社長として、息子に甘い現社長である父が与えてくれた橘のための部署で“主任”の肩書きをもらい仕事を学ぶことに励んでいます。
橘には父が見込んで高校二年生の時に家庭教師としてつけてくれ、一足先に「マル冨フーズ」に就職して社長の信任も厚い高山(たかやま・30歳)が学生時代と同様に教育係としてつき、厳しい指導をしています。
優秀でクールで、いかにもできるエリートサラリーマンという高山に憧れ、橘は彼を目標に日々頑張っている・・・つもりでしたが、如何せん苦労知らずのお坊ちゃま。修業の一貫として他社のスーパーでアルバイトとして働くことになるのですが、そこで、近所のマンションで塗装工事をしている有吉と知り合うことになるわけです。
お坊ちゃんですから、最初はああいうガテンな方々の独特の仕事着や雰囲気に「カッコいいけどちょっと怖い」と憧れつつも“猛獣の群れを隠れて見つめるインパラ”状態だった橘ですが、あるきっかけで言葉を交わすようになり、率直な物言いに腹を立てることがあっても、若くして人の上にたち、部下から慕われる有吉の男らしさや真っ直ぐさに、少しずつ惹かれるようになっていきます。
やがて、実際に働くことで本当の意味での「働く」という意味を学んでいき、また二人の(有吉と高山)タイプの違う言わば「働く先輩たち」を通してなんとなく恵まれた環境に暖かく包まれてすごしてきた橘が社会人としての自覚を芽生えさせていく、成長と恋のお話。
「ガテン」というだけでツボなのでそれだけでも私には美味しいお話。先日の烏城さんのトラック野郎もそうだけど・・・ああ、もっとどっかにガテンはないものか。
しかしキャラとして印象深かったのは、実は有吉ではなく橘の教育係・高山の方です。
高山は橘が高校生の頃から「先生」として令息に相応しい教育を施して橘を育ててきたわけですが、彼にはもちろん橘への特別な感情がありました。
そんな想いはひとかけらも滲ませることなく大切に育ててきた掌中の珠を、後からきた有吉に掻っ攫われてしまうという、高山は可哀相な役回りだったのですが、しかし彼は引き際が非常に綺麗だった。大変株を上げたと思います。
高山は恋には破れても仕事の出来る男として橘の憧れを受けるに足る男でした。そんな彼のお話も読んでみたいな。
池戸さんはあとがきで、有吉と橘、高山と橘の、種類は違えど等しく大切な絆を書きたいと述べておられましたが、ちゃんと伝わってきたと思いましたよ。