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彼の寡黙な唇
火崎 勇著 / 奥貫亘イラスト
海王社
ガッシュ文庫(2007.3)


取材で新進脚本家を訪問した編集者の笹色。その脚本家は笹色が恋愛に臆病になった原因の男・弓削だった。
――高校時代、好奇心にかられた情事の現場を、憧れていた先輩の弓削に踏み込まれ罵倒されて以来、笹色は自らの恋愛を封印してしまった。嫌悪に歪んだ彼の眼差しが忘れられない…。
――しかし、数年後、弓削との再会で彼が笹色に嫌悪感を抱いていないことを知る。寡黙な彼が時折見せる微笑みや優しさが嬉しくて、笹色は封印したはずの恋心を抑えられなくなり…。
弓削大我(ゆげたいが・27歳)×笹色怜(ささいろれい・26歳)
シナリオライター×編集
高校時代の先輩後輩同士、再会もの。

高校時代、サッカー部だった笹色は、当時憧れていた先輩が二人いました。
一人は成川(なるかわ)、もう一人が弓削です。
その頃笹色は自分がゲイではないかと薄々感じながらも確信が持てずにいる時でした。ひょんなことから成川に誘われ、映画に行ったり遊びに出かけたりするようになるのですが、ある日成川に部室で突然触れられ、先輩への憧れと性への好奇心でそれを許してしまうのです。
ところがいざ笹色が絶頂を迎えようとしたとき、突然扉が開き、憤怒の表情となった弓削が飛び込んできます。怒鳴りつけられ笹色は部室を逃げるように飛び出しますが、それ以来二人の先輩の顔を見ることができず、サッカー部も辞めてしまいます。
そして、その出来事で自分がゲイだと自覚はできたものの、弓削に怒鳴られた記憶がトラウマとなり、男同士を蔑んだ弓削の顔がちらついて、恋愛ができなくなってしまったのです。

しかし、ゲイバーで知り合ったメイクアップアーティストの穴沢(あなさわ)に家を空ける間の留守番を頼まれたのをきっかけに、笹色は弓削と再会します。穴沢の住むマンションの隣の部屋がなんと弓削の部屋だったのです。さらに笹色の勤める出版社の仕事で、笹色は弓削にインタビューをすることになります。

弓削に嫌われていると思っているので、笹色はビクビクです。しかし、弓削が殊更自分を卑下したり冷たく当るようなところは見られません。
もしかして忘れているのかな…?と多少の不安と安堵を覚えつつも、とりあえず仕事は順調に進みます。
ところが、ただの友人の穴沢と笹色の関係を、『寝ている』と勘違いした弓削が再び爆発。無理矢理ソファーに押し倒されて、手でされてしまうのです。
「誰とでもするんだろう」という弓削に、笹色も怒ります。二人はまた擦れ違いに。

「言葉が足りないばっかりに」という火崎さんお得意のパターンです。それで数年無駄にしております。
高校時代、鬼の形相で怒鳴り込んできたという弓削も、穴沢との関係を誤解して露悪的な態度になる弓削も、本音は大変わかりやすいです。誰が見ても好きな子(笹色)に手を出されて怒ってるとしか思えません。
なのに、お互いがお互いを誤解して擦れ違っているのが、じれったいというか苛々するというか(笑)
その辺りの不満や苛々は、穴沢が代弁してくれているので、多少は気がすみますが、もっと言ってやってもいいくらいだと思います。とくに弓削には。

留守番を頼まれて行ってみたら偶然隣の部屋に住んでいたとは、都合の良い偶然ですが、今回は偶然じゃないんですよね。
オネエ言葉のゲイ・穴沢が、おバカさんな二人のためにひと肌脱いでくれています。しかし、二人を隣同士に住まわせておいて、あとは成り行き任せというのがねー。もうちょっと弓削にでも根回ししといたら、いらぬ誤解は招かなかったと思うんですけど、その「いらぬ誤解」がお話になるわけですよね(笑)

笹色にいらぬことをした成川も登場し、その当時の気持ちを語っていますが、優等生で爽やかなイメージだったというわりには、セコイところありますね。でも、正直と言えば正直なのかな。
あんなことがあったのに弓削と成川がまだ友人だというのが、ちょっと不思議です。仲が良すぎて、対抗意識も強かったということなんですかね。時々チクチク苛めてあげると良いと思いますよ。

巻末に奥貫亘さんによるコミックが2ページばかり載っていますが、こちらも面白いです。
穴沢さんには、二人とも頭が上がらないかもしれませんね。ラブラブな二人はからかわれつつも幸せというところでしょうか。
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