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思へば乱るる朱鷺色の
花川戸 菖蒲著 / 日輪早夜イラスト
二見書房
シャレード文庫(2007.3)


かつて大学在学中、ある事件をきっかけに友人たちから避けられるようになった朱鷺。過去を捨て、東京に出てWEBデザイナーとなった今も、想いを寄せていた同級生の雄大を忘れることができず、金持ちの男に暴力的に抱かれることでどうにか自分を鎮めてきた。
だがある日、そんな朱鷺の家に突然雄大がやってくる。必死で追い返そうとするものの、雄大はそのままマンションに居つき同居生活が始まってしまう。
拭い切れない過去への罪悪感から、訪ねてきた理由を聞くこともできず、苦しさを持て余した朱鷺は再び男の元へと出かけていくが…。
添島雄大(そえじまゆうだい)×椎名朱鷺(しいなとき)
25歳同士。
「思へば乱るる朱鷺色の」
「みちゆきは戀ふて美し」の二編。
朱鷺が京都弁です。

大学在学中、ある事件をきっかけに誤解され、友人や近所中から白い目で見られるようになってしまった朱鷺。当時好きだった雄大からも同じような目で見られたくない、と朱鷺は大学を中退し家を出て、東京にやってきました。
現在はマンションの一室でWEBデザイナーとして生計を立てていますが、ある日突然、雄大がマンションを訪ねてきます。
追い返そうとする朱鷺ですが、結局は雄大に上がりこまれ、しかも雄大は帰ろうとしません。数日後には雄大の荷物が大量に運び込まれ、同居を許すことになってしまいます。

大学を辞め、東京に出たあとも朱鷺は雄大を忘れることはできませんでした。そんな自分を罰するように、朱鷺は知らない男に暴力的に抱かれることで自分を痛めつけていました。そうやって自分を痛めつけて、雄大への苦しい想いを忘れようとしていたところもあります。

しかし、目の前に毎日雄大がいる現実。なぜここにきたのか、過去の事件について何か問われるのではないか。自分の気持ちを知られるのではないか。
朱鷺は様々な不安や汚れた自分を知られるのが怖くて、雄大を必死に追い出そうとします。わざと嫌われるような行動をしたり。
しかし雄大は何を言っても飄々と受け流すだけで、怒ることも、出て行くそぶりも見せません。
やがて限界に達した朱鷺は、他の男からの連絡に出かけていき、いつものように暴力的なsexで傷だらけになって帰ってきます。今度こそ愛想をつかして出て行くだろうと思ったのに、雄大は、黙って朱鷺の傷の手当てをします。

朱鷺がどんなに自虐的に振舞っても、全てを受け止めてくれる雄大は、おそらく「そのつもり」で訪ねてきたのだろうということはわかります。つまり、朱鷺のことが好きで訪ねてきたのだろうと。
真相がわかるのはちょっと後になりますが、朱鷺が大学を辞めたちょうどその時、雄大は実家に帰省していて事件のことを知りませんでした。学校に戻ってみて、初めて噂を聞き驚いたのです。朱鷺とはちゃんと話をしたことはなかったのですが、いつも自分を切なそうに見つめていたことが気になっていました。しかし、その時は、毎日の忙しさに朱鷺の記憶は薄れてしまいます。
ところが数年後、ふと朱鷺を思い出した雄大は、すがるような眼差しで自分を見つめていた朱鷺を思い、事件の真相を当事者である教授に尋ねにいきます。
そしてそこで、朱鷺がどんな想いを込めて、自分を見つめていたのか、朱鷺の想いを知ることになります。

そして、朱鷺も伝えられない叶わない想いに辛い日々を送ってきましたが、そこからの雄大も、やはり一途に朱鷺を追いかけて、朱鷺のマンションまでやってきたんですね。
朱鷺が自分を追い返そうとしても、たとえ他の男に抱かれてきても、それが全て自分のせいだと知っていたから、雄大は全部を受け止めることができたんですね。

全部わかってるなら話してあげればいいのに・・・と思わないでもなかったです。
でも花川戸さんの登場人物は、優しくも結構厳しいので、自分でちゃんとわからないとダメなんですよね。それは書き下ろしでもそうですけど、人に言われるんじゃなくて、自分から変わらないと根本的には何も変えられないと、厳しく暖かく突き放す。
朱鷺みたいに、すぐに自分を押さえ込んでしまうような子は、確かにそうして荒療治して貰った方がいいみたい。

それにしても「事件」についてはちょっと腑に落ちない部分が多々あります。どうして学校や教授は真相を明らかにしなかったのかしら。ある人物を救ったために、朱鷺が全てを被って犠牲になったんですよね? これは普通に考えて、おかしいと思うんですけど…。

書き下ろしは、二人が恋人同士になってからのお話ですが、またひと波乱あります。
二人の将来について、ずっと一緒にいることを考えている雄大に対して、決して小さいとは言えない会社社長の息子である雄大の将来を思って「家庭を持って、自分を愛人にして」などと言う朱鷺。
朱鷺は恋愛に関してはまったく未熟。こんなこと言われたら雄大も怒りますよ、そりゃ。
一番効果的な方法で、「愛人になる」ということがどういうことなのか、ここでも実践で学ばされてしまう朱鷺(笑)。雄大の想いはわかりすぎるほどなので、嫌な感じはしないですし、やはり朱鷺には一番いい方法だったようです。

ページが進めば進むほど、なんだかだんだん朱鷺が赤ちゃんぽくなっていくような気がしました。
前の記事の花川戸さんより、花川戸節が炸裂してたように思います。
「ずっと一緒に」というテーマはここでも。
Hシーンが可愛らしくエロかったです。
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